2021-09-21

リスク過多の今に新しい保険業!【東京海上HD・小宮暁】の「顧客の『いざ』を支えるソリューションを!」

東京海上ホールディングス社長 小宮 暁

コロナ禍に加えて、自然災害の多発と、リスクの多い時代にあって、保険会社の役割とは何か─。「本業を通して社会課題の解決を図るのがわれわれのパーパス(使命)」として、東京海上ホールディングス社長・小宮暁氏は「『お客様のいざ』を支えていきたい」と語る。その『お客様のいざ』は、事故や災害があった時に、「明日から、また復旧していこう」という『いざ』と「明日に向かって挑戦していく」ときの『いざ』の2つがあり、それを「ふだんから支えていく」ことが自分たちの使命と小宮氏は強調。同社は2008年以降、欧米の有力保険会社を次々とM&A(合併・買収)してきた。今や、収益は国内と海外でほぼ半々という構成。本社は東京で、資産運用拠点はニューヨーク、サイバー攻撃などへの備えはロンドンを拠点にと本社機能も分散、つまりグローバル化が進む。事業も社員も多国籍化し、デジタル戦略も深まるが、「経営のど真ん中はやはり人」と小宮氏。「人」の潜在力をどう掘り起こしていくのか─。
本誌主幹
文=村田 博文

本業を通しての社会課題解決を

 リスクの多い時代、不確実性の時代をどう生き抜くか─。

 小宮暁氏が東京海上ホールディングス社長に就任したのは2019年(令和元年)6月で、2年余が経った。この間も台風など自然災害も多く発生。

 小宮氏が社長になる前年の2018年(平成30年)と2019年は台風、河川の氾濫と自然災害が数多く発生、全国各地で大きな被害を受けた。

「はい、2020年、昨年度は、台風は上陸こそしなかったものの、また大きな水害がありましたし、それで新型コロナ感染症のパンデミック(世界的大流行)も起きましたしね。なかなか平時というか、ノーマルな状況でというのが無いという現実ですね」

 今年8月は台風9号の襲来で西日本から東日本までの幅広い区域で水害が発生し、河川氾濫で床上浸水被害が発生した。

「本当に不確実な時代に入ったということで、リスクは増大しているし、個人のお客様も企業のお客様も将来に対して、また社会インフラに対しての不安はお持ちだと思うんですね」

 損害保険を主軸に保険業を営む会社として、「不確実な時代にあるからこそ、われわれの経営のパーパス(使命、存在意義)に戻ることが大事だと思っています」と小宮氏は原点回帰を強調し、次のように語る。

「われわれは、社会課題の解決ということを通じて、『お客様のいざ』を支えられると言っています。その『いざ』は、事故や災害があったときに、明日からまた復旧していこうということの『いざ』ですね。それから、これは明日にチャレンジするというか、まだ見ない世界や道を切りひらいていく、挑戦をするときの『いざ』ですね。その『いざ』をサポートしていきたい」

 東京海上ホールディングスは1879年(明治12年)、日本初の損害保険会社『東京海上保険』として設立。翌1880年にはロンドン、パリ、ニューヨークで保険の元受業務を開始。創業時から世界を視野に入れた事業を展開してきた。

 今年8月8日、創業142周年を迎えた。その142年の歴史を踏まえて、小宮氏は、「安全を提供して安心を広げることによって、その『お客様のいざ』を支えていく。やはり世のため人のためということで、社会になくてはならない会社になるんだと。創業以来、142年間、それをわれわれの事業のパーパスにして来ました。今、46カ国・地域で社員は約4万3000人いるんですが、国内・海外を通じて、1人ひとりの社員にそのパーパスを浸透させていきたい」と語る。

 社会課題の解決─。『お客様のいざ』を支えるという言葉に象徴されるように、「わたしたちの事業の成長は、社会課題の解決によってのみある」という思いを小宮氏は示す。

「チャリティ(慈善事業)だとか、CSR(企業の社会的責任)ということも大切ですが、マイケル・ポーター教授(米ハーバード大)が言うようなCSV(Creating Shared Value、社会と共有する価値の創造)が大事だと思います。本業のところをやればやるほど、世のため人のために役立っていくという、そういう方向にビジネスをフォーカスしていくことでやってきた142年だと思いますし、今後もそうしていきたい」

本誌主幹 村田博文

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