2021-09-21

リスク過多の今に新しい保険業!【東京海上HD・小宮暁】の「顧客の『いざ』を支えるソリューションを!」

東京海上ホールディングス社長 小宮 暁



社会のニーズを捉えて〝日本初〟を次々と開発

 同社には、〝日本初〟のものが多い。1914年(大正3年)には日本初の自動車保険を開発。まだ日本に車が1000台位しかない頃のこと(現在の扱い件数は約1500万件にのぼる)。

 1923年(大正12年)の関東大震災直後には、被災者に見舞金を配布。当時の火災保険では大地震は補償の対象外であったが、保険各社は見舞金を配ることにした。

 その際、政府から補助が出たのだが、東京海上はそれを受け取らず、自社の資金で全額を賄った。それだけ財務基盤が強く、自立的に対応したということ。

 1959年(昭和34年)には賠償責任保険を発売。モータリゼーションのトバ口で、事故が増え始めようとする時期。事故の被害者は泣き寝入りを余儀なくされていた。これではいけないと、〝賠償責任補償〟という新しい考え方を打ち出した。

 1989年(平成元年)には介護費用保険をスタートさせた。

 1998年(平成10年)には〝人身傷害保険〟を発売。自身に過失割合が生じ、相手方が無保険である場合などの必ずしも十分な補償が得られなかった。そこで、契約下に被った損害はすべて補償していこうというコンセプトで商品を開発。これは、今の自動車保険の標準的な考えになってきている。

 2002年(平成14年)には、生命保険と損害保険の一体型商品『超保険』を開発。顧客にとって、生保と損保の両方が必要。それがバラバラで分かりにくいというニーズを取り入れての商品開発である。

 そして今、社会課題は何なのか、その中で自分たちが一番役に立つ領域はどこにあるのかを常に考えていこうと小宮氏は社員に呼びかける。

『事業の地理的分散』がなぜ今、必要なのか

 同社の事業拠点は46カ国・地域にのぼり、従業員数は約4万3000人。国内約2万5000人、海外は約1万8000人と海外が半数近くになっている。

 同社は2008年の英キルン、米フィラデルフィア・コンソリデイティッドの買収(買収金額が約5000億円)を皮切りに、2012年には米デルファイ・フィナンシャル・グループ(同2000億円)の買収とM&A(合併・買収)を次々と実行。

 さらに2015年に米HCCインシュアランス・ホールディングスを約75億ドル(9400億円強)でM&Aするなど、この13年余の間に立て続けに欧米の有力保険会社を買収した。

 欧米の保険会社買収を重要な経営戦略に捉えたのは2007年。翌08年には世界的な金融危機のリーマン・ショックが発生。

 日本国内は〝失われた20年〟の真っ只中にあり、円高、デフレや労働規制などの〝六重苦〟で成長制約要因が多いと指摘されていた。経営を取り巻く環境にもリスク要因が多くなっていた。

 加えて、日本は台風や水害などの自然災害大国。異常気象などの要因もあって、自然災害は年々増加。顧客と保険契約を通して交わした約束(補償)を迅速に、かつ円満に実行していくためには一層の経営基盤の強化が求められるようになった。

 災害、特に自然災害は突発的に発生する。そうしたリスクを軽減させる手立てをどう取るべきか─。その1つの解が、「事業の地理的分散」であった。

 こうして、日・米・欧を主軸に、46カ国・地域で事業を展開するというグローバル体制を築き上げてきたという経緯。業績に占める海外の比率は、売上高で40%弱、利益面では40数%になる。

 同社は、2021年度を起点にした3カ年の新中期経営計画を推進中。

 今回の中期経営計画の定量的目標は、最終年度の23年度末に修正純利益5000億円、修正株主資本利益率(ROE)12%というもの(ちなみに2021年3月期は修正純利益4460億円、修正ROEは11・5%)。

「新中期経営計画については、それぞれ一生懸命取り組んでもらっていますが、日本のマーケットは利益ベースで、年5、6%で伸びていって欲しいし、海外のビジネスは年9%弱、1桁台の後半ぐらいで伸びるとすると、この3年計画のどこかのタイミングで海外の利益が5割を超えます」

本誌主幹 村田博文

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