2021-09-17

鹿島社長の決意「開発から施工、維持管理まで、建物の一生に関わる多機能な会社を目指す」

天野裕正・鹿島社長



再生エネルギーに注力


 ─ 人口減少というお話がありましたが、改めて国内市場をどう考えていきますか。

 天野 2030年くらいまでのことを考えると、まず建築に関して東京で言えば大型の再開発案件が各所にありますし、大阪では2025年に万博もあります。もちろん、当社が全て受注できるというわけではありませんが、順調に市場に出てくれば建設市場全体としてありがたいことです。

 また土木の方ではインフラの改修、再整備があります。高度成長期に国土を形成してきた施設も、年数が経って手を入れなければならない時期に来ています。行政側もそれなりの予算を付けていますから、底堅いものがあります。

 ─ 日本は菅義偉首相が2050年のカーボンニュートラルを宣言するなど、脱炭素の流れができています。どのように対応しようと?

 天野 国としての方針ですから、しっかり進めなければならないと考えています。当社は現在、秋田県の秋田港、能代港で着床式洋上風力の工事に取り組んでいます。国内で初めての商業ベースでの洋上風力発電事業となる見通しです。

 また、水素については北海道河東郡鹿追町で家畜の糞尿からバイオガスを発生させ、そこからメタンガスを抽出、それを水蒸気と反応させて水素を発生させるという事業に参画するなど、従来の建設業とは少し距離のある分野にも入っています。

 それ以外にもバイオマス発電にも携わっています。九州の霧島酒造さんの工場から出た焼酎粕を発酵させてバイオガスを回収して、発電などのエネルギーに利用する事業で発電設備の建設を手掛けているんです。今は小さなリサイクルですが、スマートシティにもつながる考え方だと思っています。

 ─ 設備を建設するだけでなく、エネルギーをどう活用するかという部分にまで入り込んでいると。

 天野 そうです。中核事業である建築・土木の生産性を上げ、洗練させていくことが大前提ではありますが、我々としてはできることは何でも取り組んでいこうと考えています。社員も知恵を出すことが求められますから、育てる意味も込めています。

 社会課題解決に向けたソリューションの一端で、事業化や実際の経営という面では今後、乗り越えなければならないことが出てくると思いますが、追求していきたいと思います。

 ─ ところで現在、東京・浜松町の「世界貿易センタービルディング」の解体工事を手掛けていますね。2029年度の全体工事完成を目指して新築工事に入るそうですが。

 天野 そうです。当社は1968年に日本最初の超高層ビルである「霞が関ビルディング」の施工を手掛けましたが、世界貿易センタービルは2番目に着手した物件です。超高層ビル群の勃興期のモニュメンタルなビルの解体が始まっているというのはエポックな出来事だと思います。

 超高層も第2世代に向かっていく流れがあるわけですが、一方で1974年竣工の「新宿三井ビルディング」は、現在の姿を残したまま、当社が屋上に超大型制震装置を取り付けて、今後も使い続けることになっています。どちらも当社の技術が活かされています。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事