2021-10-05

社会課題解決を資金面で支える【READY FOR・米良はるか】の コロナ危機の今こそ、「人と人のつながりを」

READYFOR社長 米良はるか

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医師側が直接、医療現場の危機的情報を発信して

9月3日(金)、READYFORは医療法人社団悠翔会(東
京都港区、佐々木淳理事長・診療部長)と提携、在宅医療に医師、看護師を派遣する悠翔会をサポートするクラウドファンディングを実行すると記者会見(WEB方式)で発表した。

 悠翔会は、「新型コロナが〝災害医療〟となった今、第5波を乗り切るご支援を」と緊急に呼びかけた。

「このままでは、医療を必要としている人の中から、誰を救うか、誰を諦めるかの判断さえ、わたしたちはしなければならなくなります」

 悠翔会の佐々木理事長らはこう訴え、「そんなこと、誰もしたくない。だから今、総力戦でやれるところまでやります。この大災害を乗り切るための、お力添えを必要としています」と訴えたのである。

 悠翔会は、北千住、葛飾、墨田、新橋、新宿・渋谷、練馬、品川の7拠点にクリニックを持ち、千葉県では柏・流山、船橋、稲毛の3拠点、神奈川県では川崎、藤沢に2拠点を構える。
 在宅医療に強みを持つ悠翔会は、通常の訪問診療に加えて、新型コロナ自宅療養者の最後のセーフティネットとして、日夜、往診を行っている医療機関。
『コロナ専門往診チーム』を組成し、医師、看護師、スタッフなど延べ1116人の人員手当て、そして医薬品、医療設備購入費用を募るため、クラウドファンディングサービスのREADYFORと提携したといういきさつ。

 支援金の目標金額は10月末までを期限に1200万円。筆者は、9月3日午前に記者会見があった同日の午後1時半から、単独で米良氏にインタビュー(WEB)したが、すでに午前中で100万円以上の支援金があり、9月13日現在ですでに3100万円が集まったという。

 これだけ一般の人たちからの反応が早いことに改めて驚かされたが、これは何と言っても、悠翔会とREADYFOR両社が、自分たちはコロナ危機対応、特に在宅医療で「こういうことをやります」という情報発信を正確、かつスピーディに行っていることが大きいと思う。

『中等症Ⅱ以上の方は在宅酸素やステロイド投与が必要になりますが、糖尿病や血栓症の既往症のある方は急激な高血糖や血栓症の再発にも注意が必要です』
 こういった啓蒙啓発や、『コロナ専門往診チーム』について、組織図も提示。コロナ専門往診チームは医師、看護師、診療アシスタント計357人、在宅コロナ患者フォローアップチームは看護師172人、そして酸素濃縮器回収チームは診療アシスタント276人──といったように説明も具体的だ。

 悠翔会・READYFORと資金提供者の間に、在宅医療実行に向けての意識の共有、つまり『共感』が得られたということである。

『人と人のつながり』を大事にする資金提供を!

 クラウドファンディングには、『寄付型』、『購入型』、そして『貸付型』といろいろなタイプがある。全体の約9割は資産運用を主な目的にした『貸付型』(ソーシャルレンディング)だといわれる。

 READYFORの場合は、創業者・米良氏の「人と人のつながりを大切にしていく」とする経営理念の下、人々の共感やつながりを媒介に「お金の流れを変えたい」ということで出発。そこで、金銭的リターンではなく、寄付金控除が認められる『寄付型』が多く、それに近い『購入型』も取り扱う。

 先述のコロナ禍に立ち向かう医師、看護師やスタッフなどへのサポートから、苦境にある飲食・宿泊業への支援、今年8月の豪雨災害に際しては緊急災害支援基金を立ち上げるなど、社会課題解決につながる案件が多い。

 中には、動物愛護のための資金提供もある。例えば、宇都宮動物園のメスの象、『宮子』のための支援。48歳とかなり年老いた象で、市民の人気者だが、段差のないプール建設資金がコロナ禍の経営難でままならない状態。そこへクラウドファンディングで寄付金を募ったところ、短期間で集まり、建設のメドが立ったという。

 取り扱うのは実に多種多様。ふるさと納税に関するものから、〝遺贈寄付〟といったものまで、いろいろな領域、分野にわたる。
 人生の終活としての、この遺贈寄付は注目され始めている。遺贈寄付といえば、富裕層の話かと思われがちだが、金額の制限はなく、「自分の持っている金が社会のどこかでお役に立てば」という人が相談しやすい場として、クラウドファンディングを設定している。

 クラウドファンディングは、インターネットの扱いに慣れた若い世代、特に30代から40代の年齢層が多く参加しているが、この遺贈寄付のように、高齢者熟年世代の参加も登場し始めている点も注目される。

 いわば全世代が参加しはじめたということ。READYFORがこの10年間で手がけたプロジェクト数は累計で1万5000件以上、支援金額も累計で180億円以上にのぼる。

 資金提供のリスポンスとしては、例えば飲食・宿泊業への支援に参加した場合に、優待券やクーポンがもらえるということである。

「人と人のつながりを大切に」──。米良氏のクラウドファンディングが注目されるのは、内外で分断・分裂が起こる中で、『共感』の輪を広げていくこと、それも、自分たちのできる範囲で広げていこうという積み重ねにある。

 女性経営者の先達で、ディー・エヌ・エー(DeNA)の創業者会長の南場智子氏(1962年生まれ、経団連副会長)はクラウドファンディングの社会的使命について、

「思いを共有するということ。そして1人ひとりが大きな負担をせずに、みんなを支えていける素晴らしい仕組み」と評価、米良氏らの活動を激励する。そして、「何より、民間の力を引き出すときです」

と企業経営者の使命を南場氏は強調する。

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本誌主幹 村田博文

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