2021-10-05

社会課題解決を資金面で支える【READY FOR・米良はるか】の コロナ危機の今こそ、「人と人のつながりを」

READYFOR社長 米良はるか

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機敏・迅速な実行で既存の制度を補完

 米良氏は1987年(昭和62年)10月生まれ。2010年慶應義塾大学経済学部卒。在学中に『あの人検索スパイシー(SPYSEE)』の立ち上げに参加。ここでAI(人工知能)に出会うと共に、インターネットは人と人のつながりを深めるということに気付く。

 英ロンドンスクール・オブ・エコノミクスにも留学、経済の見聞を深め、慶大大学院に進学し、大学院在学中に米スタンフォード大に留学。米国でのインターネットにも触れてきた。
「わたしたちができることを」諦めずにやる。1人ひとりの力は小さくても、インターネットを通じて、力を合わせれば1つのまとまった力になるという思いを米良氏は事業化。

 事業の立ち上げは2011年。2014年に株式会社化と基盤を固め、起業から10年後の今、コロナ危機の真っ只中で、READYFORはいろいろな気付きを与えてくれる。
 社名のREADYFORも、Are you ready?(用意はできているかい? )と、一緒に行動しようという呼びかけが含まれている。

 誰もが挑戦でき、また、挑戦を諦めないですむように、「お金の流れを是正したい」と米良氏は話す。
 コロナ禍での医療支援も政府や東京都などの自治体による資金の支援や配分はある。しかし、こうした財政資金の配分は大体にして大づかみで、かつ審査に時間がかかり、時に執行が遅れがちになる。

 国民や都民が負担する税金が使われるのだから、一定程度の時間がかかるのも分かるが、それだけでは当該現場の切迫した状況を支援するのに間に合わないとか、細かなニーズを拾えないといったことも生ずる。

 そうした財政資金の配分という既存の制度との関係をどう考えるのか?

「ええ、そういうところを補うことができれば、現場では柔軟に資金を使って、本当に必要な人たちを支えられるということにつながると思っています。例えば、国からの補助金や助成金というところを当てにすると、どうしても助成金や補助金のルールというのがありますので、半年とか1年とか資金を手に入れるために時間がかかってしまう。その間にキャッシュフローは途絶えてしまうよねとか、やならければならない事に手を付けられないよねということがあると思うんですが、クラウドファンディングの場合は、それがすぐ実行できます」

 米良氏は、非常事態のときなどには、「1つの資金調達の手段として非常に有効です」と強調する。

「新しい金融の仕組みをつくる」という活動に、既存の金融大手も関心を示す。

 飲食店支援の関連ではアメリカン・エキスプレスと提携、あるいは中小企業支援関連では西武信用金庫や京都中央信用金庫などと提携。さらに東京医科歯科大学や日本医科大学、琉球大学など教育・研究機関との提携も相次ぐ。『共感』は各領域に広がりつつある。

大病を患い、そして出産未来に思いを馳せて

 米良氏は今年10月、34歳を迎える。社会課題の解決へ向け、1人ひとりが共感し、つながり合い、資金を出し合って、一歩一歩、解決へ近づいていこうという10年の歩み。この10年間には、個人的にも大きな試練に立たされた。

29歳のとき、悪性リンパ腫が見つかり、抗がん剤治療を余儀なくされた。経営が軌道に乗りかけたときのことでショックを受けたのは事実。


(オンラインでインタビューに答えるREADY FOR社長・米良はるか)

「病気になって、半年間お休みをさせていただくということになり、そこでもちろん治療は大変だったんですけれども、仕事から離れて改めて、生死観が生まれるというか、大きな病気だったので死も意識しました。でも、誰しもいつかは亡くなるわけなんですけれども、そこに向かって自分の時間をどう有効に使っていくべきなのか。本当に自分の人生、生きてよかったと思えるようにするには、どういうことをやっていけばいいのだろうということに、すごく向き合う時間を持つことができたと思っています」

 そして、がんが寛解し、医師にも認められて出産を決意。今年出産した。母は、赤ちゃんの顔を見て考えることは何か?

「そうですね、未来のことですね。子どもを見ると、勝手にこの子が30年後になったら2050年だな、みたいなことを思います。自分は結構未来を考えて、今の時代をつくることを大事にしていきたいという価値観なので、そういうことを思えて幸せです」

 悔いのない人生を生き抜く──。常に未来に思いを馳せ、前向きに生き、今、自分たちにできることは何かを追い求める米良氏。
 人と人のつながりを大事に、『共感』の輪を広げるという米良氏の営みがこれからも続く。

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本誌主幹 村田博文

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