2021-10-08

【問われる日本の科学技術戦略】日本の量子コンピューターに勝算はあるか?

NECが開発中の量子アニーリングマシン



海外とは相当差が開いているという現実の中で…



 ただ、日立の水野氏は「海外はすごく投資が盛んで、日本は理化学研究所が一番開発を進めているが、企業はほとんど参入していない。海外とは相当差が開いている」と指摘する。

 現在はスパコン同様、量子コンピューターの開発も米中2国が先行。米国ではIBMやグーグルなどのIT企業が開発にしのぎを削る。中国では中国科学技術大学が米国並みの成果を発表しており、ここ数年で相当、開発を強化しているという。日本はまだまだ米中に比べれば後れを取っているのが現状だ。

 そこで9月1日には産業界が一体となって、量子技術を社会実装させるための「量子技術による新産業創出協議会」を設立。トヨタ自動車、東芝、NEC、NTT、日立、富士通、三菱ケミカルなど、24社が参画。通信技術やコンピューター開発に携わる企業だけでなく、材料やデバイス、計測技術など幅広い技術を持った企業が加わり、新たな量子関連産業やビジネスの創出を目指している。

 慶應義塾大学理工学部物理情報工学科准教授の田中宗氏は「日本でも重点領域としてAI、バイオ、マテリアルといった分野に加え、量子も国家戦略に位置づけられている。ただ、量子に関連する人材は数も厚みもまだまだ増やしていく必要がある。慶應などの大学では研究拠点を設けているところもあるし、産学共同研究を含めて、大学の様々なリソースを活用いただきながら、一緒に前に向かっていくことが大事」と指摘する。

 近年、日本では「科学技術立国」という言葉があまり聞かれなくなった。日本の産業振興や国際競争力の強化を図る量子コンピューター開発の行方は、日本の戦略そのものが問われていると言えそうだ。

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