ステーブルコインを米国で発行する理由 GMOインターネットは『ステーブルコイン』を独自に発行することを決め、まず米ニューヨーク州からステーブルコインを発行する『特定目的信託会社』の認可を取得。同社は今年初めから、『GYEN(ジーエン)』を発行し、海外で事業を展開。
日本はまだ法律が整っておらず、国内居住者はGYEN の取引ができない。
ステーブルコイン。ステーブル(stable、安定、堅固という意味)とコイン(coin、通貨)を組み合わせた言葉で仮想資産の1つ。
旧来の仮想資産は需給関係いかんで価値変動が激しいので、法定通貨(円やドルなど)や金などと〝ペッグ(ヒモ付け)〟させることで、通貨としての価値の安定を図ろうというもの。
ここで使われるのも、デジタル通貨など仮想資産の取り扱いで登場してきたブロックチェーン(分散型台帳)の技術。ブロックチェーン技術は改ざんされにくいというところに特徴がある。
ステーブルコインのGYEN(ジーエン)はなぜ、米国での事業認可となったのか。
「それを日本国内では日本政府が認めていないから、発行することができないのです。米国は先進的なので、それをきちんと国として認めていて、米国の認可をきちんと取って僕らが発行したということです」
今のところ、日本国民はGYEN を購入できないし、日本国内で使うことはできないとい
うことである。ともあれ、インターネット事業に国境はない。
「インターネットは世界マーケットなので、僕自身は国内外を意識していません」と熊谷氏はそれができる国や地域から事業創造を手がけていく考え。
改めて熊谷氏がステーブルコイン発行にこだわる理由を語る。
「ステーブルコインは一言でいうと便利だからなんですが、どのように便利かと言うと、仮想資産から法定資産に換えるのにはコストと時間がかかる。仮想資産から、法定資産に連動する仮想資産に換えた方が、瞬時で済むんですね」
例えば、ビットコインやイーサリアムという仮想資産を持つ人が、ドルや円などに換えるためにはまず、取引所から出庫しなければならない。その出庫にかかる時間と、ドルや円などの法定通貨に換える手数料が「すごくかかるんです」と熊谷氏。
そこで、仮想資産としてステーブルコインがあれば、旧来のビットコインとGYEN が瞬時に交換、つまりは取引ができるということである。
国と企業の関係「通貨発行は国家主権に基づいて行われるものだし、やはり国家のある種の武器なんですね。だから、国の通貨発行権を犯そうなんて大それたことは、僕は全く思っていません」
熊谷氏が、国と企業の関係について、語る。
「僕は、国が差し出せって言うなら、いつでもうちのを差し出しますよと申し上げたぐらいで、お国が良くなってもらわなければと思っています。お国に生かされていますから。日本人だし、日本企業じゃないですか。だから、お国があって初めてGMOなので、国家の通貨発行権を阻害しようなんていうことは全く思っていません」
熊谷氏は、ステーブルコインの発行について、「国が始めるまで待っていたら、世界競争しているので遅れてしまうんですね。だから、取り敢えずやらせてくださいと、そういう気持ちです」と語る。
仮想通貨そのものについては、最近、中国人民銀行(中央銀行)がその決済や取引情報の提供などを全面的に禁止すると発表。
「経済や金融の秩序を乱す」という理由だ。
仮想通貨を通じた資本の国外逃避を防ぐ狙いもあると見られるが、米国など自由主義国と中国で本件の対応も違ってくる。
あくまでも、GMOが目指すのは市場参加者が〝利便さ〟を感じて、決済や送金が低コスト
で手軽にできる金融サービスの提供ということ。その意味での市場創造であり、事業創出だ。
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