起業家人生で受けた『3つの衝撃』 熊谷氏は自分の起業家人生の中で、インターネットとの出会い、そしてその中でのブロックチェーン技術との遭遇の2つに「大きな衝撃」受けたと述懐する。
そして、もう1つ、この2つと同じ位の衝撃を受けたのが、NF T(Non-Fungible Token、非代替性のトークン)というデジタル資産の登場だと言う。
Token(トークン)は象徴、しるし(印)といった意味だが、NFTはブロックチェーン技術によって作成された、コピーすることのできない、代替不可能なデジタル資産のことである。
このNFTを活かした〝デジタルアート〟がオークション市場で、数十億円で落札されるということが現実に起きている。ところが、このNFT市場もまた投機性が高いという問題がこれまで指摘されてきた。楽曲、画像などのデジタルコンテンツ(資産)をそれなりの価値で幅広いファン層に届けるにはどうすればいいかという課題である。
楽曲、映像などエンターテインメント分野をはじめ、市場のあり方に大きな影響を与えそうなのがNFTの登場。熊谷氏はNFTにより、「柔軟な課金手段が発生した」と語る。
(NFTサービス『アダム by GMO』を発表する記者会見の場で)「皆さん、NFTに関しては唯一無二でコピーができないというところに着目しているんですけれど、わたしが着目しているのは加えて、それよりもこの柔軟な課金手段が発生したことの方に価値があるということです」
具体的に熊谷氏が注目するのは、例えばデジタルアートの2次流通、3次流通でサザビーズなどのオークションで、その価値が明確に把握できるということ。
画家が自分で直接、購入希望者に10万円で自分の画を売ったとする(1次流通)。それが時を経て、2次、3次流通に入り、オークションで100万円で取引され、さらに次のオークションで1000万円で取引されたとする。NFTを活用した仕組みだと、その各段階で、著作権者である画家に例えば10%の著作権料が支払われる。
今までは、楽曲や画像、イラスト3DモデルなどのIPホルダー(知的財産の保有者)には2次、3次流通での取引は知らされず、著作権料も支払われずじまいというケースが多かった。
作曲家や画家など、I P(Intellectual Property)という知的財産の所有者は、このNFTの登場で恩恵を受けるし、エンターテインメント分野を含めて、あらゆる分野で「新しい市場の創出につながります」と熊谷氏は強調し、次のように言う。
「僕は、IPホルダーの逆襲だと言っているんですよ」
こうしたデジタル資産はこれまでインターネットの普及で〝無料〟扱いされてきたが、NFTを取り込んだ新しい流通の仕組みができると、「IPの時代、IP主役の時代に戻るんです。元々、そうじゃないですか」と熊谷氏。
新しい市場の創出、新事業の掘り起こしの挑戦が続く。
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