2021-10-12

【保守人員不足にどう対応?】鉄道の保守業務をDX化 東急電鉄の「鉄道版インフラドクター」

「鉄道版インフラドクター」の導入シーン(提供:首都高技術、撮影協力:朝日航洋)



伊豆急行での導入効果

 最初は東急グループの伊豆急行で18年に実施した。その結果、現場でのトンネル特別全般検査に要した日数は約8割減(15日
→3日)、検査費用も約4割減少した。また、「検査精度のバラつきも解消され、技術継承の促進も期待できる」(白田氏)。こ
れと同時に、各データをシステム上で管理することも可能になった。

「保守業務でも線路を見る保線や高架橋などを見る土木、駅舎などを見る建築、電気設備などを見る電気といった具合で各部門があるが、それらの各部門の情報を共有することができれば効率も上がる」(武田氏)

 東急電鉄では鉄道版インフラドクターの導入で検査費用の最大3割の削減を目指す考えだ。一般的に鉄道のコスト構造は人件費や車両修繕費、減価償却費、賃料など、ほぼ固定費で成り立っている。コロナ禍で輸送人員の激減が起き、ポストコロナでは在宅勤務などの普及で大幅な増加は見込めない。そのため、「この固定費をどれだけ下げられるか」(幹部)が競争力に直結する。


8Kカメラやレーザースキャナなどを搭載した計測車両

 また、人手不足も大きな課題だ。鉄道の保守業務に携わる熟練の技術者は減少傾向にあり、「深夜かつ屋外という過酷な環境下での仕事」(同)といったイメージが強い。東急電鉄では保守業務に携わる現業部門の人員は約2800人(鉄道統計年報[平成
30年度])だが、今後は生産年齢人口が減少する。50年度には20年度比で約3割減少するとの予測に同社は身構える。

 武田氏は「別の検査にも導入できないか検討していくと共に、全ての世代で使いやすくしていきたい」と語る。このシステムの全部や一部を他の鉄道会社や道路会社、空港会社などに外販することも視野に入れる。

 線路などの保守業務は過酷かつ地味なものではあるが、鉄道会社が根幹に据える〝安全〟に直結する。その保守業務にデジタル技術をいかに融合させていけるかが、鉄道会社間の差別化要素になりそうだ。

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