2021-10-12

『トヨタ』水素を運ぶ仕組みづくりで川崎重工と連携

「スーパー耐久レース in オートポリス」で走行したトヨタ自動車の水素エンジン車(提供:同社)

トヨタ自動車が水素のサプライチェーン(供給網)づくりに本腰を入れている。ポイントは同社が注力する水素エンジンにおける〝仲間づくり〟だ。

 9月18日に開催された「スーパー耐久第5戦鈴鹿」。レースにはトヨタが水素エンジンを搭載した「カローラ」で参戦。そこで使用される水素の一部を川崎重工業、岩谷産業、電源開発(Jパワー)の3社が連携して手配した。豪州産の褐炭由来の水素を保管場所からレース会場までFC(水素燃料電池)トラックで輸送し、水素社会の実現に不可欠なラストワンマイル輸送の改善点などを検証した。

 トヨタの水素エンジン搭載カローラのレース走行は今回で3戦目。1戦目は水素の「作る」「使う」「運ぶ」でいうところの「使う」側の選択肢を広げるトライアル。水素エンジン搭載の乗用車を走行させた。

 2戦目では水素を「作る」ことを主眼に置いた。大林組が地熱発電の電力を水素製造に利用する実証装置を大分県九重町に建設。使用段階だけでなく製造段階でも二酸化炭素(CO₂)の排出がゼロになるグリーン水素を初めて活用した。

 そして3戦目の今回は「運ぶ」をテーマとした。2022年には川崎重工の世界初の液化水素運搬船で運ばれる水素を使用することになっている。

 トヨタ社長の豊田章男氏は「(レースへの)水素エンジンでの参戦は、カーボンニュートラル時代において選択肢を広げていくんだということに尽きる」と強調する。欧州系メーカーを中心に電気自動車(EV)へと舵を切っているが、トヨタは「エネルギーを巡る環境は各国で異なる。どの国のエネルギー事情にも対応できるようにフルラインナップで電動車を用意する」(幹部)のが基本スタンスだ。

 その新たな選択肢の1つが水素エンジンとの位置づけ。実際、今年4月から始まった耐久レースでは、各回で水素エンジンの性能を高めている。固定されている回転軸を中心として生み出される力を示すトルクの性能を高めと同時に、水素の充填時間の効率を上げている。その結果、数カ月でガソリンエンジン並みの出力を実現している。

 もちろん、水素の価格や充填設備など、水素の社会実装には課題が山積みだ。また、水素エンジンの開発ではBMWやマツダが挑戦したが、量産化には至っていないのが現状。緒に就いたばかりの水素エンジンだが、トヨタの本気度が問われている。

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