2021-10-13

【監査役・監事の役割とは?】会計学の大家・八田進二氏が語る「求められるのは職業専門家としての矜持と倫理」

八田進二・青山学院大学名誉教授(大原大学院大学教授)



「会計監査」と「業務監査」

 ─ 組織の監査が社会貢献にもつながっているという認識が必要だということですね。

 八田 はい。さらに言えば監査の前提として、情報の信頼性の確保があります。どの組織もそうですが、基本的には財務情報の信頼性には「会計監査」がベースになっています。加えて、決算書の信頼性を確保するためには、その背後に存在する人の行動について監視することが必要です。どういう行動、あるいはどういう行為が行われたのか。そこまで検証する必要があるのです。これを「業務監査」と言います。

 ですから、監査役は会計監査と業務監査の両方を担っているのが一般的なのです。株式会社の場合も原則そうなっています。しかしそうなると、監査役は決算数値だけではなく、権限を有する人たちの行動にも目を光らせなければなりません。

 また、決算数値を調べるために一定の会計知識が必要ですが、最近は会計の基準も複雑になっており、規則も詳細になっていろいろな情報を発信しなくてはならなくなっていますので、ある程度、最新の情報を持たなくては通用しなくなっています。

 ─ 自己研鑽が必要です。

 八田 その通りです。なお、会計監査については、一部は法律上、義務化もされていて、別途、会計監査人というプロの力を借りて協力を仰ぐことができるというわけです。

 しかし一方の業務監査は基本的に監事・監査役の専業になります。中でも、権限を欲しいままにする、権限を使って暴走してしまう理事長や理事会がきちんと健全に機能しているかどうかを見届けることが重要です。

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