―― 日本の産業界の反応はどうだったと考えますか。
有馬 やはり遅かったですよね。日本には「三方よし」や社是など、古くから優れた経営の教えがあるが、経営者や従業員が納得して終わり、と言うところがある。しかし欧米は、事業の本流でそれを実施する、ビジネスや取引のルールに取り込んでゆく。このようにして、日本は後追いになっているような気がします。
しかし、最近は日本企業も気候変動に関心を持つようになっていますし、2050年のカーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)実現に向けて動き出そうとしています。これからは、企業が普段やっているように、目標を定めて、PDCA(計画・実行・評価・改善)をしっかり回してゆくことが重要だと思います。
―― そういう意味では、リーダーの覚悟が試されますね。
有馬 そうですね。何といってもリーダー層の意識転換は必要だと思います。
―― 今は米中対立が長期化し、国家の対立や価値観の対立がいたるところで起こっています。ある意味では、このESGやSDGsという考え方は共通認識になり得るものだと考えていいですか。
有馬 これは極めて難しい問題だと思いますが、わたしは米国にしろ、中国にしろ、いずれは富の大きさだけでは測れない価値というものが主流になって、社会だとか、世界という方向に寄ってくると思います。地球温暖化を歓迎するわけではありませんが、人類にとって「共通の敵」が現れたとも言えます。SDGsが人類の「共通の敵」と戦うための、「共有の武器」になれば良いと思います。