2021-10-30

危機への備え──「天災はいつでもやってくる」【私の雑記帳】



新政権の『成長と分配』策


 岸田文雄・新政権もそうした危機管理体制づくりへ、真価が問われる時である。

 21世紀入りして20年という節目での新政権発足。岸田首相は、“新しい資本主義”を標榜して、「成長と分配の好循環」を実現する政策を訴える。

 安倍晋三政権時代のアベノミクスを批判する立場からは、「アベノミクスの継続だ」という声も出るが、そうしたレッテル貼りではなく、日本経済再生のための本質的手立ては何か──という視点こそが大事であろう。

 1990年代初めにバブル経済が崩壊し、日本は“失われた10年”の時代に入る。

 それがいつしか“失われた20年”になり、さらに2000年代に入ってからもデフレ基調が続いた。結果的に“失われた30年”となった。

 GDP(国内総生産)も500兆円台で停まったまま。1人あたりのGDPも世界23位まで落ち、香港よりも下位だ。

 アベノミクスで株価は上昇し、企業業績も向上。しかし、従業員の所得は思ったように上昇していないという現実を踏まえて、岸田首相は、「分配」政策を打ち出そうとしている。その実行を注意深く見守りたい。

『成長』に必要な存在


「成長がなければ分配もない」と岸田首相は言う。岸田内閣が今後、どんな成長政策をつくり出すか注目していきたい。

 富を生み出すのは民間企業。その企業数は約360万。うち99%は中小企業である。その中小企業は全雇用の70%を占め、雇用面では重要な役割を果たす。

 その中小企業の存在意義をどう捉えるか?

「これまで中小企業に対して、生産性の悪い所はつぶせとばかりに言う向きもありましたが、中小企業は、日本の成長のエンジンと捉えるべきです」と話すのは、東京中小企業投資育成社長の望月晴文さん(元経済産業事務次官)。

 中小企業は大企業のいわゆる下請として、部品や部材の生産を担ってきたが、自分たちの技術を磨き、「チャレンジングな企業家精神を持ったところは多い」と望月さん。

 むしろ、大企業のトップは、〝失われた20年〟〝 失われた30年〟の間にリストラに迫られ、〝守り〟に追われてきたという指摘もある。

明暗を分けるもの


 かつて、電機業界と括くくられてきた業界で、ソニーグループは純利益で1兆円を稼ぐ企業に成長。片や東芝は不正会計問題などもあっ
て〝失速〟、今はガバナンス問題などでも迷路に入っている。この差はどこから生まれるのか?

「成長へ向けてのきちんとしたシナリオが描けているかどうかがカギです」と望月さん。成長シナリオづくりの必要性は大企業であろうと、中小企業であろうと同じ。

『ソサエティ5・0』の時代がいわれ、通信業界では5G(第5世代)の時代、さらには6Gもささやかれる。イノベーションによる成長はいつの時代も必要。そして、成長あっての分配である。

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