2022-06-22

拓殖大学国際学部教授・佐藤丙午「専守防衛はいかに残酷な政策であるかが分かった」

ロシアは明らかに計算違いをしていた



 ―― ロシアによるウクライナ侵攻から3カ月余、この雑誌が出る頃には4カ月が経とうとしています。現状を佐藤さんはどのように見ていますか。

 佐藤 今回のウクライナ侵攻が発生したことについては、ロシアの地政学上の関心をふまえると、ある程度、予想されていました。

 というのも、2008年にはロシアは旧グルジア(ジョージア)に対して軍事侵攻し、2014年にはロシアによるクリミア半島の併合がありました。そういう背景があったことを踏まえると、ロシアがクリミアを維持するためには、ウクライナの東部地域からの補給線、水の補給も含めた、いろんな形でのライフラインを支配する必要があるわけです。

 ですから、長期的にはロシアがさらに影響力を加えてくるであろうことは予想できましたし、 2014年以降、ウクライナも欧米諸国から大量の軍事援助を受けて、能力を強化してきました。そのため、もし両国で戦争が起こったら、ウクライナもある程度抵抗するだろうということも予想されていたんです。

 ―― なるほど。以前から予想されていたことだったと。

 佐藤 ええ。ただ、なぜ2月24日というタイミングで、プーチン大統領が戦争を決断したのか、また、個別の具体的な戦況の中で、ウクライナがどれだけ善戦したのかというのは、おそらく戦後に検証しないと分からないことも多いと思います。

 それでも、先ほど申し上げた地政学的な要因や、NATO(北大西洋条約機構)の拡大など、対立構造が以前からありましたので、ウクライナがある種の発火点であるだろうということについては、そんなに不思議ではありません。

 その上で、わたしはよく言われているように、今回ロシアは明らかに計算違いをしていたということは言えると思います。

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