2022-09-08

政府が原発政策を大転換 再稼働推進に踏み切る岸田首相

政府は、東日本大震災以降、凍結を続けてきた原発の新増設に舵を切る。岸田文雄首相が、自らが議長を務める「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、次世代型原発の開発・建設や原発の運転期間延長について、「年末に具体的な結論を出せるよう検討を加速してほしい」と指示した。

 正式決定すれば、2011年3月の東京電力福島第1原発事故以降、新増設を凍結してきた政府方針の大転換となる。

 電力の中長期的な安定供給確保が狙いで、既存原発の活用についても、事故後に再稼働した実績のある10基に加え、追加で7基の来年夏以降の再稼働を進める方針も表明。「国が前面に立ってあらゆる対応を取っていく」と宣言した。産業界は「非常に高く評価したい」(十倉雅和経団連会長)と歓迎する。

 追加再稼働を目指す7基の内訳は、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機、東北電力女川原発2号機、関西電力高浜原発1、2号機、中国電力島根原発2号機、日本原子力発電東海第2原発。実行会議では、原則40年、最長60年と定められている原発の運転期間延長も検討する。

 政府は昨年10月に閣議決定した「エネルギー基本計画」でも、原発について「可能な限り依存度を低減する」と明記するなど、一貫して新増設に慎重な姿勢だった。しかし、ロシアによるウクライナ侵略により、日本のエネルギー安全保障をめぐる環境は一変。原油や石炭といった化石燃料の高騰や、ロシア極東の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」をめぐるガス供給への不安も露呈し、原発の新増設容認へと傾いた。

 ただ、新潟県知事の花角英世氏は「安全性に関する検証が終わるまでは再稼働の議論はしない」と断言。柏崎刈羽原発所長の稲垣武之氏も「われわれから再稼働がこの時期にできますとか言うことはできない。まずは社会の皆様からの信頼を回復しないことには……」と話す。

 地元の同意をいかにして得るのか。政府が容認しても、すんなりと原発再稼働ということにはならなそうだ。

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