2023-07-11

【厚生労働省】 「異次元の少子化対策」財源議論は年末に先送り

政府は6月、少子化対策や財源の考え方を示した「こども未来戦略方針」を閣議決定した。来年度からの3年間で年3兆5千億円規模の予算を追加。目玉事業である児童手当拡充について、岸田文雄首相は「来年10月分から実行したい」と表明した。今後は、政権が掲げる「異次元の少子化対策」に向けて財源確保が課題となる。

 戦略方針では、来年度から3年間で集中的に取り組む「加速化プラン」を提示。児童手当拡充はその目玉で、所得制限を撤廃し、対象を現在の「中学生まで」から「高校生まで」に拡大。第3子以降への加算も高校生まで広げ、支給額を月3万円に倍増させる。

 この他、出産費用の負担軽減に向けた保険適用導入や高等教育費の支援、就労要件を問わず時間単位の保育所利用を可能とする「こども誰でも通園制度」を創設など幅広いメニューをそろえた。

 ある政府高官は「少子化対策に対する首相の思い入れは非常に強い」と強調。先週の記者会見も首相が国民に自分の思いを訴えるために設定されたとのことで、官邸スタッフは記者会見で使用するパネルづくりなどの作業に追われたという。

 ただ、財源に関しては、社会保障費の歳出削減や既存予算の活用を進める他、「支援金制度」導入を検討するなどと記載するにとどめ、具体的な議論は年末に先送り。「実質的な追加負担は生じさせない」との首相の主張にも「本当にそんなことが可能なのか」との意見が与党内でも広がっており、増税を封印したことに対しては財界からの不満がくすぶっている。

 厚労省内では「負担増の話は支持率に直結する。生煮えの内容を示しても、国民や野党に追及されるだけで、何も得なことはない」(幹部)との見方も。

 年末には結論を出さなくてはいけないだけに、別の幹部は「日本医師会など利害関係者も多いので調整は非常に難しい。最後の最後まで相当もめるだろう」と予測している。

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