建設業の倒産増に歯止めがかからない
─ 足元で企業の倒産件数が増えています。帝国データバンクの調査では、今年8月まで16カ月連続で倒産件数が増加しているとのことですが、藤井さんは現状をどのように分析していますか。
藤井 8月の倒産件数は742件となり、前年同月比で5割の大幅増を記録しました。2000年以降で3番目の増加率となっていて、16カ月連続で前年同月を上回りました。これは、リーマン・ショック前後の2008年6月から09年8月の連続増加期間(15カ月)を超える数字です。ですから、記録上は100年に一度と言われたリーマン・ショック並みの状況になっているということですね。
一番大きな原因として考えられるのは、実質無利子・無担保のいわゆる「ゼロゼロ融資」を借りたものの、返済がままならず、経営の行き詰まった中小企業が急増しているということだと思います。
─ ゼロゼロ融資はコロナ禍で、売り上げが減った企業に実質無利子・無担保で融資する仕組みでしたね。
藤井 はい。その融資を借りた企業の多くが元金の返済期限を迎えるということで、支払うことが困難な企業が最終的に事業継続を断念する事例が増えているのだと思います。
もっとも、こうした企業はコロナ前から厳しい経営を強いられていたところも多いです。例えば、最近倒産した飲食店の中には、コロナ禍の特例措置として猶予されていた社会保険料の納付や、雇用調整助成金などの各種コロナ支援策が終わったタイミングでお手上げになる企業も多い。だから、もらえるうちは支援金をもらって事業を続けてきたけど、業況が変わらず、倒産に至ったということだと思います。
─ ということは、言葉は悪いですが、つぶれるべくしてつぶれたということですかね。
藤井 そういうことになります。コロナが無ければ経営破綻していた企業が3年遅れで出てきたということだと思います。
もう一つは、エネルギー価格などの物価高に加え、人手不足問題やそれに伴う人件費負担の増加が重荷となり、事業継続を断念する中小企業が増加してきたこともあるでしょう。
昨今、飲食やホテル、旅館などで人手不足が深刻化しているのですが、これらの業種に共通しているのは、コロナ禍で店やホテルを開けたり、閉めたりするような状態が続いていたため、雇用調整助成金をもらいつつも、働く人たちにとっては全然収入が安定しないということで退職してしまう。だから、コロナが収束した今でも人手が足りずに商売を続けられない企業も多いのだと思います。
─ 人手不足は本当に深刻になってきましたね。
藤井 そう思います。業種別にみると、倒産した企業はサービス業、建設業、小売業が多く、特に顕著なのが建設業の倒産。建設業の倒産増に歯止めがかからない状態です。
建設業の人手不足は本当に深刻です。鉄骨や木材などの建設資材価格の上昇が止まらず、コストの増加が経営を圧迫してきたことも大きいです。