2024-03-12

ニューバランスジャパン社長・久保田伸一「お客様とのコミュニケーションを重視、『質』を追求する戦略で日本市場の深掘りを」

久保田伸一・ニューバランスジャパン社長

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「生活」に近い場所でビジネスを展開する

 コロナ禍の3年余、当社は店舗を閉鎖することはなかったものの、非常に苦労をしました。その後、2023年5月にコロナの位置づけが「5類」になって以降、ものすごい勢いで店舗にお客様が戻ってきました。これはいわゆる「リベンジ消費」のような形でしたから一過性のものと捉えています。

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 ただ、それ以降も店舗の売り上げは好調です。それに加えて為替の円安もあり、インバウンド(訪日外国人観光客)の来店も活発です。警戒しているのが、日本にも押し寄せているインフレによって、どこかで一時的に消費が鈍化することです。

 また、世の中の「健康志向」が強まり、スポーツへの関心は高まっています。そして22年のサッカーワールドカップ、23年のWBC、バスケットボールワールドカップなどもあり、「スポーツは面白い」と感じる消費者は確実に増えている実感があります。このことは事業の追い風です。

 この状況下に、我々は2023年12月8日、東京・吉祥寺に新コンセプト店舗「ニューバランス吉祥寺」をオープンしました。

 これまでは大都市の商業圏を中心に出店していましたが、今回の立地は吉祥寺の街中で、地域、消費者の皆様の生活に近いところでビジネスを展開したいという思いがありました。

 この新店舗ではお客様との「コミュニケーション」が自然と生まれるような設計にしています。店舗中心に大きくシーティングエリアを作り、お客様とスタッフが話しやすい空間を演出しています。また、当社のシューフィッターが「3Dフットスキャン」でお客様の足を計測し、そこでお話をお聞きしながら、ベストな商品を見つけて、ご納得いただいた上で購入いただくことができます。

 我々は元々コミュニケーション、サービスに強みを持ってきましたが、これをさらに強くして、ブランドとしての差別化要素にしていく狙いがあります。

 すでに先行して米ボストンで展開している新店舗では、既存店以上の売り上げを実現しています。この要因は、商品点数を絞ることで、1つひとつの商品にフォーカスが当たるようになったこと、コミュニケーションによってお客様の納得度が上がっていることが挙げられます。また、商品点数を絞ったことは在庫の機会損失を防ぐことにもつながっているのです。

 この店舗フォーマットは今後、スタンダードにしていきます。立地や規模などを変えながら、進化させていきたいと思います。


日本で培ったものを生かし世界を変えていける

 10年ほど前に、グローバルでマーケティング強化を打ち出しました。それまでは、一流アスリートとあえて契約しないことを強みにしていましたが、今はより大きな展開をするためにも、一流アスリートとの結びつきを強める方向に転換したのです。

 日本人選手でも野球の大谷翔平選手、村上宗隆選手、陸上の田中希実選手、ゴルフの稲見萌寧選手などと契約しています。

 当社はニューバランスの日本法人ですが今、我々に求められているのは「質」です。10年ほど前までの日本は、アメリカに次ぐ第2の市場で、質とともに量も担う存在でした。しかしお陰様で、全世界の市場で売り上げが増加し、日本が無理に量を追う必要はなくなりました。

 そこで今は、これまで日本で培ったものを生かして、さらに「質」を追求することで、日本が世界を変えていくことが可能だと考えているのです。

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