選挙がある年は各国が内向きになりがち
─ 小林さんは商社出身という観点でお聞きします。日本は名目GDP(国内総生産)がドイツに抜かれて世界4位になり、一人当たりGDPでは34位に低下しています(国際通貨基金=IMFの2023年10月予測)。日本の存在感低下が気になるところですが、こうした現状をどのように受け止めていますか。
小林 私は、あまりGDPは気にしていません。これは円のレート次第だからです。
むしろ今年こそ、為替は円安から脱却してもらいたい。いわゆる通貨の実力はその国の経済の実力と言いますが、今はあまりにも安すぎます。金利政策など、円安の脱却には、様々な施策が必要ですが、何とかして円安から脱却してほしいと思います。
やはり、GDPは為替レートで大きく変わります。ただ、それを踏まえても、一人当たりGDPが34位というのは由々しきことです(IMF10月予測)。これは長く日本にデフレマインドが凝り固まってしまった結果ですから、これを変えていく必要があります。
日本人は基本的に値上げしたりするのは美徳に反するというマインドなので、繰り返しになりますが、良いものには値がつく、値が高いのが当然である、という方向に持っていくことが大事なことだと思います。
─ 日本人自体が劣化しているわけではないですね。
小林 そうです。世界全体で言いますと、今年は各国の選挙が多い年です。年明け1月の台湾総統選挙から始まり、インドネシア、ロシア、インド、そして秋の米国大統領選挙等、世界中で選挙が続きます。
選挙がある年というのは各国の政策が内向きにならざるを得ないところがあります。これがいささか心配です。
─ そうなった時の日本の役割は何だと考えますか。
小林 日本の役割は経済しかないと思います。日本は、経済を地力あるものにしていくということが重要です。それには産業の育成が必要であり、それもメリハリをつけたものにすることが必要です。
あとは、「スタートアップ」を大事にすることです。産学官金が一体となってスタートアップを支援することが大事です。岸田政権でも、中小企業の海外展開や省人化・デジタル投資への支援に力を入れていますし、これは心強い政策だと思います。
いろいろな議論はありますが、現実的に日本の産業を支えているのは中小企業です。その方々が希望をなくしたり、横を向いたりする状況は日本経済にとって危険です。
特に今は中小企業でも世代交代の時期で、廃業が多くなっています。しかも、廃業のうち半分は黒字廃業です。黒字なのに、息子や娘が継いでくれないから会社を畳まざるを得ないといった企業が増えています。