「従来からの『駅近』だけでなく、話題の事業をいろいろ考えていかないと、人口が減っていく中では立ち行かなくなる」─ヒューリック会長の西浦氏はこう危機感を見せる。日本の不動産御三家に次ぐ時価総額を実現しているヒューリックは他社と横並びではなく、手掛けていない領域を積極的に手掛けてきた。今は物流施設や研究施設、高齢者施設などで、新たな取り組みが進む。
【あわせて読みたい】JFEがヒューリックを巻き込んで進める 「次世代サイエンス型」街づくり耐震見直しに新たな評価も ─ 今、世界の政治、経済は混沌としています。その中で企業経営も変化が求められていますね。
西浦 よく「勝ち組」、「負け組」という言い方がされてきましたが、その「勝ち組」というのが、業界の中でも何社かしか生き残れない時代が来るのではないかと思っているんです。
─ 非常に覚悟が求められる時代だと。
西浦 ええ。例えば、リクルートの研究機関であるリクルートワークス研究所のレポートによると、2040年に1100万人の労働人口が不足すると試算されています。
中でも運輸、建設、医療・介護といった生活を支える業界で人材が不足するとされています。そう考えていくと、人口減少がいろいろな意味で影響してくるということだと思うんです。
当社のオフィスの空室率は1%以下を維持していますが、今後もしかしたら、建て直したオフィスは賃料は入って来るけれども上がらない、古いままのオフィスは新しいところに抜けていくということになるかもしれない。普通だったら、新しいオフィスは賃料が高くて然るべきだと思いますが、それが上がらないという状況になって来るのではないかと見ているんです。
ですから、場所など、何か特徴がなければいけないというのが一番のポイントです。今後のオフィス市況は、人口がどんどん減っていきますから、全体としては決していい環境ではないと思うんです。オフィスがどんどん増えて需要が増えるかというと、そこまでは必要ではない。
─ 他社にない特徴を持たせる必要があると。
西浦 そうです。例えば耐震など危機管理的な部分も大事になると思います。当社は現在、約250棟の物件を保有していますが、2020年から2029年までに、約100棟を再開発、建て替えを進めるという方針を打ち出しています。
全てのビルを震度7クラスの地震に耐えられるようにしようということですが、業界内外からあまり評価されていなかったと思います。
それが24年元日の能登半島地震を受けて、皆さんが我々の取り組みに対して「なるほど」と納得される雰囲気が出てきました。今、やらなければならないことは耐震問題、富士山噴火対応、人口減に伴ってポートフォリオをどう変えていくかという3つが大きいと思うんです。