2024-05-17

日本総合研究所会長・寺島実郎「今後、日本は一体何を生業としていくのか。もっと真剣な議論が必要だ」

寺島実郎・日本総合研究所会長

日本経済に対する信頼度が劣化してきている



 ─ 前回は、日本再生のキーワードはレジリエンス(耐久力)だと。国民の耐久力を高めるような産業づくりが必要だという話でした。

 寺島 最近、よく質問を受けるのが、日本円がなぜ1ドル=150円から戻らないのかということです。

 これはメディア等で様々な専門家が解説してきたことが間違いだということが見えてきた。それは何かというと、「日米の金利差が円安をもたらしていて、ドル高だから円安なのだ」という話だったわけです。

 ところが、米国では金利引き下げの局面に入り、日本は利上げに入っていくような状態になっても、150円台のままというのはなぜか? これは分かりやすく言うと、日本経済そのものに対する信頼度が、それほどまでに劣化してきているということです。

 ─ つまり、国力の低下?

 寺島 そうです。間違いなく国力の低下を表しています。

 今、日本の円はアジア最弱通貨と言われています。米ドルに対してだけ安いわけではありません。第2次安倍晋三政権が発足した2012年と比較して、対シンガポール・ドルで36%、対タイ・バーツで33%も下落していました。だから、今ではアジアから来ている人たちが「日本は安すぎる」と言うような状況になっています。

 日本人は今、アベノミクスについて真剣に問い直す必要があります。アベノミクスは金融緩和と財政出動という二本立てで、デフレからの脱却を図ってきました。その先に成長戦略を実行しようと言ってきたわけです。

 ─ それがアベノミクスの「3本の矢」でしたね。

 寺島 アベノミクス前の2011年に、日本円は75円という最高値をつけました。つまり、80円を割り込むほど円高だった時代において、金融を緩和し、円安と株価の引き上げに誘惑を感じたのも分からなくはない。ですが、十何年間もエビ反りしているうちに戻れなくなったというような状態なのが現状です。

 今はそれを何とかしてソフトランディングさせなければいけません。方向感として日本が目指すべきことは、財政規律をしっかりと守る方向を目指しながら、段階的に日本の産業のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を高めていくことです。

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