2024-05-22

日本郵船がアンモニアに注力する4つの狙い「日本の海事産業の復活を!」

アンモニアを燃料にした大型外航船(イメージ図)

「船の燃料転換は当面はLNG(液化天然ガス)が主流となるが、その先の新燃料としてはアンモニアがある」─。海運業界の脱炭素化について、こう見通しを語るのは日本郵船社長の曽我貴也氏。同社は今、世界初のアンモニアを燃料とする商船の建造を進めている。2030年までに4500億円を投資し、49隻の低・脱炭素船舶を竣工させる中で、なぜアンモニアに着目したのか。

エア・ウォーターが食品連合づくり 米卸最大手の神明と資本業務提携

自ら需要も創り出す!

「海運業でも脱炭素化は必須。『物流のゼロエミッション化も船社選定の評価ポイントとする』というお客様の声は日増しに強くなっている。将来、脱炭素に対応していなければ相手にされない時代がくる」─。日本郵船執行役員の横山勉氏は話す。

 8月、同社が開発した世界初となるアンモニア燃料船が横浜で運航を開始する。小回りのきかない大型船の入出港などをサポートする曳船(タグボート)「魁」(右下写真)だ。さらに同社は開発を進め、2026年にはアンモニア燃料大型外航船を竣工させる。

 海運の脱炭素化の主な手法は船を動かす燃料を従来のC重油から温室効果ガス(GHG)を排出しない次世代燃料への置き換えだ。その脱炭素燃料にはLNGをはじめ、水素や生物資源を原料とするバイオ燃料、二酸化炭素と水素を合成する合成燃料、メタノール燃料など多様な選択肢がある。

 日本郵船の次世代燃料に関する基本戦略は「全方位」(同)。その中で同社が照準を合わせたのがアンモニアだ。そこには理由がある。舶用燃料の燃料転換には大規模なサプライチェーンが求められるが、アンモニアが大量生産に最もふさわしいからだ。「窒素は大気中にいくらでもあり、再エネ電源さえあれば生産できる」と横山氏。国際再生可能エネルギー機関は50年のアンモニア市場を3.54億トン規模、舶用燃料需要は年間約2億トンと予測する。

 アンモニア燃料船の開発について、同社は4つの意義を掲げる。1つ目は海運分野の脱炭素化。世界に先駆けてアンモニア燃料船を開発・運航することで、海運分野の脱炭素化の早期実現に貢献できると期待する。

 さらに同社は船による輸送をフックにアンモニア供給網の構築にも乗り出す。これが2つ目だ。現在は「肥料などの化学原料としてアンモニアが使われている」(同)が、今後は火力発電などのGHG排出量を削減するために、アンモニアの混焼利用が増加。内需も30年に300万トン、50年には3000万トンといった政府目標も掲げられた。

 大規模なエネルギー需要を満たすために、海外から日本に向けた海上輸送需要は大きくなる。さらに横山氏はアンモニアを「運ぶ」だけでなく、「作る」「使う」といった燃料生産や燃料販売の領域にも乗り出す考えを示す。要は「自ら需要を創り出す」(同)側にも回るということである。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事