2024-06-13

もし、トランプ氏が大統領選で当選したら 何が起きると考えますか? 答える人 上智大学総合グローバル学部教授 前嶋和弘

前嶋和弘・上智大学総合グローバル学部教授

「『分断』と『拮抗』の中で、今は動いているものも動かなくなる恐れがある」─こう指摘するのは上智大学の前嶋氏。2024年11月に行われる米大統領選。そこでは前大統領のドナルド・トランプ氏の動向が世界の注目を集める。「アメリカファースト」を掲げる同氏が当選すると、対中国政策、ウクライナ戦争、中東紛争の行方が大きく変わる可能性がある。これから、世界はどう動いていくのか─。


米国では過去に例を見ない「分断」と「拮抗」が

 ─ 米大統領選の展望をお聞きできればと思います。民主党のジョー・バイデン氏の再選か、共和党のドナルド・トランプ氏が返り咲くか、日本の経済人も関心を持っています。

 前嶋 現状を見ると、アメリカでは過去に例のないことが2つ起きています。

 1つは「分断」です。南北戦争以来と言っていいと思います。当時は戦い合いましたが、今はソーシャルメディアで罵倒し合っている。例えば2021年1月の議会襲撃を見ると、自分が納得できない候補であるバイデン氏の就任は許せないとして実力行使に出ています。当時と同じくらい、米国内では議論が割れている。

 もう1つは「拮抗」です。民主党と共和党、リベラルと保守の勢力が拮抗しています。かつては中央付近で拮抗していましたから話し合いができましたが、今は左右に分かれて拮抗しているので、話し合いができないんです。例えばウクライナ支援の話はようやく4月に通りましたが、長い間、ずっと停滞し、全く進みませんでした。

 ─ 米国の外交活動にも影響する拮抗だと。

 前嶋 ええ。実は議会で最後にウクライナ支援を決めたのは22年12月で、それ以降は今年4月まで1セントも出していませんでした。これは22年11月の選挙で下院を共和党が握ったことで上院と下院とでねじれが起きてしまったことによります。

 それを見越して、12月に駆け込みでウクライナ支援を決めたわけですが、今は支援をしたくない共和党と、支援に迷いが生じている民主党という構図で、全体ではウクライナを支援したいと思っている人の割合は過半数を割りました。

 ─ 米国には世界の民主主義を守るために支援、あるいは自分達が出ていくという伝統があると我々も思っていましたが、これに陰りがあると。ある意味でロシアの侵略を許すことになりますね。

 前嶋 ただ、「アメリカファースト」の風潮が一般国民にも広がる中で、よくこれだけ支援したなとも思います。それだけウクライナの状況が悲惨で、支援しなければならないと思う人が多かったということです。しかし、私は23年夏くらいに風向きが変わり、ウクライナは難しい状況になるなと見ていました。

 特に「アメリカファースト」の風潮はトランプ氏の就任前後から出ていました。米国はすでに「世界の警察官」ではないという認識は、共和党側の圧倒的に多くの人が持っていますし、民主党側にもそう思っている人が多い。ウクライナの悲惨な状況は支援したいという声が大きかったわけですが、今は小さくなってしまいました。

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