2024-06-04

城田宏明・東京海上日動社長「『価格調整問題』で失った信頼を取り戻すべく、『お客様起点』を今一度」

城田宏明・東京海上日動火災保険社長

「再発防止に努めていくと共に、本件で失ったお客様からの信頼を回復していかなくてはならない」─こう話すのは東京海上日動火災保険社長の城田宏明氏。企業保険における「価格調整問題」で業務改善命令を受けるなど、厳しい立場に立たされた。その中で社長に就任した城田氏は「ビジネスモデルを全面的に見直す」として、「お客様起点」で会社を作り変える覚悟で取り組むと話す。信頼回復と成長に向けた道筋は─。


「お客様起点」をグループ全体で共有

 ─ 2023年12月に東京海上日動火災保険を含む損害保険大手4社が、企業向け保険料を調整していた問題で業務改善命令を受けました。企業風土を含めた改革が必要な状況下での社長就任ですね。

 城田 社会、お客様にご迷惑をおかけしました。24年2月末には保険料調整行為に関わる業務改善計画書を金融庁に提出しました。このような事態を二度と起こさないよう再発防止に努めていくと共に、本件で失ってしまったお客様からの信頼を回復していかなくてはなりません。

 業務改善計画書の確実な履行はもちろんですが、会社のビジネスモデル自体も全面的に見直していく必要があると思っています。そこで、この4月から新たな中期経営計画がスタートしましたが、キーコンセプトを「Re―New」という言葉にしています。

 ─ 会社をどのように変えていきたいと考えますか。

 城田 1つは、「本当に信頼されるお客様起点の会社」に変革していくことです。無意識のうちに根付いてしまった当社の常識、業界の慣習を変えるのは一朝一夕にはいきませんが、会社を作り変えるくらいの強い覚悟、軸を持ってやっていく必要があります。

「お客様起点」という言葉は特に強く言っています。改めて全員がお客様側に立ち、お客様や社会の常識を全ての行動の出発点とした上で、我々の理念、パーパスを踏まえて、お客様のお役に立てるように行動していくことが必要です。この「お客様起点」を全員で共有して進めていきたいと思っています。この取り組みは、大切なビジネスパートナーである代理店とも一緒になって進めていきます。

 2つ目は「リスクソリューションで次代を支える」ということです。当社は創業以来、社会課題解決に貢献するための努力をし、成長してきました。

 前中期経営計画では「サイバー」、「中小企業支援」、「グリーントランスフォーメーション」(GX)、「ヘルスケア」を重点分野と定めて取り組み、比較的順調に実績を上げ、お役に立つことができたと思っています。

 4月からの新中計では、この4分野に引き続き取り組むと同時に「レジリエンス」(強靭性)を追加し、5分野で取り組んでいきます。

 ─ そうした取り組みの中で信頼回復を図っていくと。

 城田 ええ。今回の様々な反省も踏まえて、「保険本来の価値」、つまりお客様のリスクや課題を正しく把握し、適切な提案をしていきます。

 その提案は、保険はもちろんですが、保険だけではお役に立てない分野もありますから、「保険プラスアルファ」で、ソリューションを開発して提供し、お役に立てる領域を広げていく。保険の事前事後、周辺にある経営課題にまでしっかりお役に立てるように取り組みます。

 ─ すでに、新しいソリューションは出てきていますか。

 城田 24年4月時点で約60のソリューションを開発しています。ただ、経験がない分野もありますから、本当にお客様に説明できるかも含め、まずは行動、提案し、お役に立てなければ見直していく。そうした活動を通じて、将来的には損保、生保に並ぶ事業の柱にしていきたいと思います。

 信頼回復に向けた取り組みを、全員で、代理店も含めて本気で取り組みつつ、一方でお客様のお役に立てる領域を広げていく。これによって国内でもまだ成長し続けることができると考えています。

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