2024-06-05

「利便性と安全性の両立を」NECが目指す「ハイブリッド型データセンター」

新設した『NEC神奈川データセンター二期棟』(提供:NEC)

〝閉域接続〟によるクラウドのいいとこ取りを



「昨今、グリーンやセキュリティー重視、AI(人工知能)対応などのニーズが高まっている。当社としても、このニーズに対応するため、グリーンでセキュアなところを目指して、新しいデータセンターを開設した」

 こう語るのは、NEC Corporate SVP兼クラウド・マネージドサービス事業部門長の繁沢優香氏。

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 NECが神奈川県内と兵庫県内にデータセンターの新棟をそれぞれ設立した。投資額の合計は約400億円、日本の東西のコアデータセンター拠点としての位置付けだ。

 近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を受け、データセンターの需要が高まっている。特にこの1~2年は生成AIが普及し、データセンターにも次世代技術への対応が求められるようになった。

 NECが設立したのは『神奈川データセンター二期棟』。セキュリティーの観点から場所は非公表だが、太陽光パネルによる自家発電に加え、冷気を天井から吹き降ろす最先端の空調システムと自然エネルギーの有効活用により、電力は全て再生可能エネルギーで賄う。再エネ100%のデータセンターで、利用企業のESG(環境・社会・企業統治)ニーズにも対応する。

 敷地内は監視カメラや赤外線センサーが張り巡らされ、不正侵入をいち早く検知する。ここで活用するのは、世界トップクラスの同社の顔認証技術だ。

「利便性を考慮した万全なセキュリティーということで、お客様の資産に至るまでに7段階のセキュリティーチェックを行っている。ただ、単純にチェックが多ければいいとは思っていなくて、ウォークスルーの顔認証を採用することで、スムーズな入館・入室を実現しており、利便性と安全性の両立ということをコンセプトにしている」(NECデータセンターサービス統括部統括部長の伊藤誠啓氏)

 その伊藤氏曰く「データセンターの役割が変わってきた」。

 データセンターはもともと通信の要である電話の交換局として、災害に強く安全性が高いハコとして利用が進んできた。データを保管する箱である。そこから東日本大震災などの巨大災害が発生する度にBCP(事業継続計画)の観点から注目されるようになり、昨今の生成AIの出現によって、またデータセンターの需要が高まっている。

「データセンターにはコネクティビティー(接合性)、高セキュリティー、省エネ・グリーン化が求められており、当社もこの3点を強化しながら事業を展開している」(伊藤氏)

 今回、NECが新設したデータセンターのもう一つの特徴が、米アマゾンやマイクロソフト、オラクルなどのパブリッククラウドサービスとの〝閉域接続〟ができること。

 クラウドサービスはインターネットを介して情報をやり取りするため、不特定多数が使う一般的なパブリッククラウドにはセキュリティー面での不安がつきまとう。特に重要な顧客情報や機密情報などを扱い、NECのメイン顧客となる大企業や自治体にとっては尚更だ。

 そこでNECは、同社が持つクラウド基盤サービスとアマゾンなどのパブリッククラウドをつなぎ、閉ざされた安全なハコの中で〝いいとこ取り〟をしようとしている。

「金融機関などのお客様はオンプレミス(社内運用)というか、まだまだパブリッククラウドにはいけないとか、自社ではクラウドをやるけど、信用のおけるデータセンターに置きたいというニーズもある。当社なら、パブリッククラウドとの直接接続もできるので、そこも含めてハイブリッドな形での戦略をとっている」(繁沢氏)

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