2024-06-17

奥村幹夫・SOMPOホールディングス社長「自分達の価値基準、足元を見直す。不退転の覚悟で会社を変えていきたい」

奥村幹夫・SOMPOホールディングス社長

「外部環境の変化に、我々がついていけていなかった」─。こう反省の弁を述べるのは、SOMPOホールディングスCEOの奥村幹夫氏。「ビッグモーター問題」では契約者の不利益を招き、前会長、損保ジャパン社長が辞任する事態に発展。それを受けてCEOに就任した奥村氏は「変えるべきは変え、捨てるべきは捨てる」と厳しい表情を見せる。不祥事からの再生の道筋は─。


事業モデルが環境変化についていけていなかった

 ─ ビッグモーター問題、価格調整問題を経て、グループCEO(最高経営責任者)に就任したわけですが、今後の基本方針を聞かせて下さい。

 奥村 2年前にCOO(最高執行責任者)に就いた時と、外部環境の認識はそれほど変わっていません。地政学リスクの高まり、コロナ禍があってインフレが長期化、デジタル技術やAI(人工知能)の発達とその功罪のようなものも出てきていますが、大きなトレンドは変わっていません。

 一方で、この2年間で露呈したのが、我々SOMPOグループ、損害保険ジャパンの企業文化、事業モデルが外部環境の変化についていけていなかったということです。

 この4月から、お客様や社会、社員からの信頼の回復が何をやるにしても大前提だと話しています。まず、それをしっかりとやっていきたいと思います。

 その上で、先ほど申し上げた大きな外部環境の認識が変わらない中、自然災害の増加、様々なテクノロジーが登場している中、この企業グループのレジリエンス(弾力性)を強化しなければなりません。

 その観点から見ると、やはり海外事業は今でも成長エンジンですが、これをさらに強化していく必要はあると思います。

 ─ 国内事業は人口減少などもあり先行きが厳しいですね。

 奥村 ええ。日本のマーケットを見ると、以前から少子高齢化が進展してきています。我々は長寿の、素晴らしい国で生まれ育ってきたのに、少子高齢化を目の前にして、多くの方が不安を抱えています。

 その中で我々は、微力ながら生命保険会社で「Insurhealth®」(インシュアヘルス=保険機能と健康応援機能を持った事業を表す造語)を持ち、SOMPOケアで介護事業を持っていますから、健康寿命を延ばすお手伝いをし、それでも介護が必要なケースでは、安心してサービスを受けていただけるような世界をつくっていきたい。

 新たな中期経営計画の中では、その考え方を「ウェルビーイング・イニシアティブ」として打ち出しています。生保、介護など、お客様の人生に寄り添っていくような事業体をつくっていきたいと考えています。

 ─ 高齢化の中で、介護事業の重要性はさらに高まっていますね。

 奥村 そうですね。安心の裏側には不安があります。高齢化社会は、長寿社会ですから本来は喜ぶべきことだと思うんです。ただ、ご自身もしくはご家族の健康に対する不安、介護事業が持続的かどうかという不安、そしてその結果としてお金に対する不安という3つの「不」があると思っています。

 ですから、我々はこれを正面から受け止めて、この3つの「不」を取り除いていくことで、多くの方が楽しく、明るく、ポジティブに生きていけるような世界づくりに貢献できればと思っています。

 ─ SOMPOケアの事業ですが、どういったグレードの有料老人ホームに注力していく考えですか。

 奥村 我々はどのグレードも手掛けないということはありません。ただ、多くの方々に介護サービスを提供していくためにも、多くの方に入居していただけるような価格帯の施設、この事業のサステナビリティを高めていきたいと考えています。

 ─ 先ほど成長エンジンということで話をされていた海外事業ですが、今後どのように進めていきますか。

 奥村 人口動態を見て、日本で今後、人口が増えるというのは、私が生きている間は難しいだろうと思っています。

 一方、海外はでこぼこがあっても当面の間、人口は増えていく。そして保険のマーケットも拡大していくというコンセンサスがあります。その意味では、国内での成長、規模の拡大は難しく、海外での成長を進めていく必要があります。

 ─ 地域的には、どこに注力していきますか。

 奥村 やはりアメリカ市場は有望です。保険のマーケットとしても圧倒的に大きく、成長を続けています。ですからどうしてもアメリカを外すわけにはいきません。

 一方で、中期的、長期的にはアジア、インドや中国のマーケットを見ています。人口的にも伸びていますから、中長期的な視点で今、きちんと手を打っておかなければならないと思っています。

 また、ヨーロッパは我々の中では、そこまでビジネスが大きくないので、逆に拡大の余地があると思っています。ただ、ヨーロッパには保険業界の巨人がいますから、彼らと真正面にぶつかるような商品やサービスの展開は難しい。ですから、ヨーロッパ事業は拡大を目指しますが、その方法は考えていく必要があります。

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