2024-07-09

人口戦略会議議長・三村明夫の「まず、国民の危機意識共有から」

三村明夫・人口戦略会議議長 (日本商工会議所前会頭)

なぜ、今、若い世代が子供を産まなくなったのか─。気候変動、米中対立、ウクライナ戦争などによる将来不安に加え、国内では人口減、少子化・高齢化が続く。それが日本の国力低下を招くという悪循環。「これから生まれてくる世代に対して、ミゼラブルな日本を残していいのか」と危機意識を示すのは、『人口戦略会議』議長の三村明夫氏(日本商工会議所前会頭、日本製鉄名誉会長)。折しも、厚生労働省は6月5日、『人口動態統計』(2023年度)を発表。それによると、1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率は1.20と過去最低の数値。出生者数も72万人強と過去最低。この出生率・出生数の低下は社会保障制度などにも影響を及ぼす。『人口戦略会議』は”消滅可能性自治体”という言葉を使って、全国1729市区町村のうち、744の自治体が最終的に消滅する可能性があると指摘。三村氏は、出生率について、「これ以上人口が減らないのは2.07という水準。われわれとしては2060年までに2.07に達する最大限の努力をしようじゃないか」と中長期プランを提言。「危機感の共有が大事」とする三村氏の日本再生論とは─。


危機意識から『人口戦略会議』は出発

「このままの状況で進んでいけば、日本は相当深刻な、おそらく国際的に取るに足らない小国になってしまうでしょう。そんな日本を子供や孫に残していいんだろうか。それがわれわれの危機意識です」と民間人組織の人口戦略会議議長を務める三村明夫氏は語る。

 経済人、医療人、役人OB、学者、言論人と各界から危機意識を持つ有識者29人が集まり、2023年に同会議は発足。

 三村氏は1940年(昭和15年)11月生まれの83歳。新日本製鉄(現日本製鉄)社長、会長を務め、日本商工会議所(兼東京商工会議所)会頭を2013年(平成25年)から22年(令和元年)まで務めた。

 日本鉄鋼連盟会長、経団連副会長の他、中央教育審議会会長も務めるなど、幅広い領域で活動してきた。

 本拠の鉄鋼領域でも、業界再編の中を歩んできた。1963年(昭和38年)東京大学経済学部を卒業後、旧富士製鉄に入社。その7年後の1970年に旧富士製鉄は旧八幡製鉄と合併し、新日本製鉄として再出発。2003年から08年まで社長を務めた間、世界最大手の鉄鋼メーカー、アルセロール・ミタルから買収されるかもしれないという〝危機〟を迎えるが、国内の鉄鋼関連企業とソフトアライアンス戦略(研究開発、資本業務提携など)を結んで対処。ミタル社からのM&A(合併・買収)を防いだ。

 日本企業の99%を占める中堅・中小企業の経済団体である日本商工会議所のトップを2013年から務めた9年間にも、グローバル競争をどう生き抜くかという課題を背負ってきた。

 今の日本には、国力の低下が切実な問題として降りかかっている。この現状を招いた者の1人として、三村氏は次のような責任感を示す。

「これから生まれてくる子供、われわれの孫が70歳になって、彼らが誰かに養ってもらう段になって、ミゼラブル(悲惨)な日本を残して、われわれはいいんだろうか。これが危機意識です」

 どのような日本の将来を残すかについて、三村氏は「われわれ1人ひとりに責任があると、こういう風に思わなければいけない。他人事ではいけない。自分には責任はないと思うこともできますが、わたしにはとってもできない」という心情を明かす。

本誌主幹 村田博文

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