2024-07-09

三村明夫・人口戦略会議議長「どんな日本を残すかは我々1人ひとりの責任。企業も新しい時代の中で自己変革を」

三村明夫・人口戦略会議議長(日本製鉄名誉会長)

「どんな将来を残すかについては、我々1人ひとりに責任があると思わなければいけません」─人口戦略会議議長の三村明夫氏はこう話す。2023年の日本全体の出生率は1.20と過去最低を更新。ただ「時間が経つと危機意識はどこかに行ってしまう」と三村氏。この「危機意識」の共有からスタートしなければならないと訴える。そして将来の日本を他人事ではなく「自分事」として考えることができるかが1人ひとりに問われている。


出生率が過去最低を更新 これからの日本はどうなる

 ─ コロナ禍、地政学リスク、自然災害など我々を取り巻く環境は混沌としていますね。

 三村 歴史を振り返っても明治以降、15年から20年に1度は3000名以上の死傷者が出た災害が8回起きるなど、確実に大きな災害が起きています。

 私が会長を務める、感染症や地震、台風などの災害に強い社会づくりを目指し、憲法への緊急事態条項新設などを議論する会議体「ニューレジリエンスフォーラム」では、2024年5月に日本武道館で「国民の命と生活を守る武道館1万人大会」を開催しました。

 日本で大災害が起きた時に憲法に緊急事態条項を付けることで、国会が開いていなくても、非常事態として様々な施策を取ることができるようにする必要がある。そのための憲法改正を議論していこうという活動です。

 ─ こうした本質的な論議が非常に重要ですね。

 三村 そう思いますが、一部を除いてなかなかメディアが掲載をしないというのが現状です。

 もう1つ、私が「人口戦略会議」の議長として力を入れて取り組んでいるのが人口問題です。

 ─ 人口戦略は国のビジョン、国としてどうあるべきかに関わる重要な課題ですね。

 三村 ええ。2024年6月5日に厚生労働省が発表した合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むとされる子どもの数)は1.20と過去最低を更新しました。東京都は0.99と1を切る状態になりました。沖縄県は1.60ですが、前年比で減ってしまっている。

 各県知事も危機感を持っています。例えば東京都が日本で最も多くの若い女性を集めながら、出生率が日本で最低ということは、日本全体の出生率に大きな影響を与えます。ただ、このことは認識されたものの、しばらく時間が経てば、この危機意識がどこかに行ってしまいます。

 ─ 人々はなぜ子どもを産まないのか。やはり先行き不安があるからでしょうか。

 三村 様々な要因があると思います。重要なのは、このままいったらどういう日本になるのかという姿を示すことです。その日本を我々として容認できるのか、あるいは絶対に避けなければならないのか、避けるとしたらどういう手立てを採ったらいいのか、といった危機意識を、みんなで共有するところからスタートしなければなりません。

 ─ 今のままでは、日本の人口減少は歯止めがかからないという試算がありますね。

 三村 厚生労働省の「国立社会保障・人口問題研究所」(社人研)は20年の国勢調査の結果を基に、日本の人口が2100年にはおよそ6300万人に半減するという推計をまとめています。ところが、この6300万人は少し下駄を履かせています。

 例えば、外国人は毎年約16万人増加し続けるという前提を置いており、2100年には定住する外国人が約1000万人に達しているとしています。

 もう1つ、このケースでは出生率が1.36で推移することが前提になっています。22年の1.26、23年の1.20はコロナ影響もあって下がり過ぎたということで、1.36を前提に置いたわけです。

 大事なのは、出生率が1.36ということは、依然として人口は減り続けるということです。さらに大事なのは、人口が減り続けることで高齢化率が進行し、40%に達することです。これにより、現状から人口が半減するという試算ですが、この世界がどういう世界なのか、どういう日本なのかについては、政府も誰も言ってはくれません。

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