2024-07-04

SMBC日興証券・吉岡秀二の「資産管理」戦略「銀・証の連携で顧客の資産を増やす」

吉岡秀二・SMBC日興証券社長

「お客様に安心してお取引いただける会社、社会からの一定の評価が得られる会社に」─SMBC日興証券社長の吉岡氏はこう話す。2022年に起きた「相場操縦問題」を受けて、この2年間は内部管理体制の整備に取り組んできた。その作業をようやく終え、24年4月に吉岡氏が社長に就任。この状況下でも法人部門は好調だったが、課題は個人部門。ここでは他社に先行する資産管理サービスを拡充し、巻き返しを図る考えだ。


体制整備を終え ようやく「攻め」へ

「今回の件で、全てを棚卸しする必要がある。お客様にご迷惑をおかけしたので、安心してお取引していただくことは大前提」─こう話すのはSMBC日興証券社長の吉岡秀二氏。

 2024年4月、同社は社長交代を行い、社長には吉岡氏、前社長の近藤雄一郎氏は特別顧問に就いた。この人事の背景にあるのが、22年に起きた「相場操縦問題」である。

 上場企業などがまとまった保有株を売却する際に利用する「ブロックオファー」をSMBC日興証券が引き受けた際に、その銘柄に自己勘定で買付を入れていた行為が「違法な安定操作取引」(金融商品取引法159条3項)違反とされた。

 この問題では法人としてのSMBC日興証券が金融庁から業務改善命令を受け、起訴された他、担当した幹部らが逮捕・起訴された。同社は管理体制の不備があったとして、前社長の近藤氏は体制が整うまで続投するとしていた。

 その意味で、今回の吉岡氏の社長就任は、近藤氏による体制整備、枠組みの構築が終わったことを意味している。「枠組みが機能しているか、真因が解消されているかは今後、仕事をしながら検証していく」と吉岡氏。

 そうして再発防止に取り組みながら、自律的に組織が動いていくようにするには、こうした事態を引き起こさないような企業文化が定着するかが重要。

「定着のためには『ロールモデル』のような人材が増えることが必要。そのためにはロールモデルが生まれてくるような評価や登用が重要になる。そして何よりも社長の私がロールモデルにならないといけない」

 現場の声を吸い上げて、吉岡氏自身が企業文化定着のための取り組みを継続することで「文化として根付いたと言える日が来るのではないか。そうなればお客様にいつでも安心してお取引いただける会社、社会からの一定の評価が得られる会社、社員とそのご家族が働いてよかったと思える会社になる」(吉岡氏)。

 相場操縦問題の発生時、吉岡氏は持ち株会社である三井住友フィナンシャルグループでグローバルバンキング、法人部門の副責任役員として会社の〝外〟に身を置いていた。「私も含め世間の皆様からも、どういう事態になっているのかがわかりにくかったと思う」と振り返る。

 吉岡氏は事案を受けてSMBC日興に戻り、近藤氏とともに再生に向けた取り組みを進めてきた。「1つひとつ情報を積み上げながら取り組んできたが、それが業務改善計画につながっている」(吉岡氏)

 この間、事案に関係のなかった多くの社員が厳しい立場に置かれながら、それぞれの顧客に向き合ってきた。「社員には感謝以外の言葉はない。そして、こうした事態があったにもかかわらずお客様に戻ってきていただいた。こうした思いに応えていく」

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事