2024-07-12

みずほ銀行頭取・加藤勝彦の「新メガバンク論」「戦略的に預金を取っていく」

加藤勝彦・みずほ銀行頭取

「銀行がお役に立つ時代が来た」─みずほ銀行頭取の加藤勝彦氏はこう力を込める。2024年3月に「マイナス金利」が解除され、日本でも徐々に「金利が付く世界」が戻りつつある。その中で、銀行としてどう役割を果たすかが問われるが、1つ注目されるのが「店舗」。今は様々な顧客ニーズに合わせた専門店を設置するとともに、デジタル、非対面のサービスと融合させて顧客対応を推進中。金融領域での時代変化への対応とは─。


金利が付き、経済が回り始めた

「金利が付く世界」への回帰でメガバンクの戦略はどう変わるのか─。

 2024年3月に日本銀行がマイナス金利を解除、YCC(長短金利操作)を撤廃するという決定を行って以降、日本にも金利が付く世界が戻ってきている。

 銀行業界は16年に日銀がマイナス金利を導入して以降、預金が力を失い、貸出の利ざやが取りづらくなるという形で苦しんできた。それがわずかではあるが金利が付くことは、銀行業務にとって大きなプラス。

 メガバンクの一角・みずほ銀行頭取の加藤勝彦氏は、この金利が付く世界における銀行の役割を考える上で「3つのポイントがある」と話す。

 第1に戦略。預金に金利が付くことで、収益力が高まるため「戦略的に預金を取っていく」(加藤氏)ことに大きな意味が出てくる。一方で、その預金の獲得のために「昔のように金利競争をやるかというとそうではない」と加藤氏。

 マイナス金利の導入以前、それこそ「失われた30年」の間は低金利環境が常態化したこともあり、銀行はコンサルティングなどの「非金利ビジネス」や、銀行・信託・証券が連携した、グループ総合力を生かしたビジネスに活路を見出して、ノウハウを積み重ねてきている。

 そのため、預金金利が付くことで、大きな戦略の変更はないものの、グループの中でマスリテール(一般の個人顧客)の重要性が増してきたと言える。

 第2に顧客の認識。例えば、24年から始まった「新NISA(少額投資非課税制度)」によって、証券会社のみならず銀行に対する注目度も高まった。「『みずほってNISAやっているの?』と聞かれるなど、銀行が話題に上る機会が増えた。これは我々にとって働きがいのある話だし、銀行がお役に立つ時代が来た」(加藤氏)

 資産運用への注目度が、かつてないくらい高まる中、この受け皿の一角を担うことも銀行の役割。その動きに対しては対面、非対面、リモートという3つの接点で対応し、顧客ニーズに応えていく考え。

 第3にインフレ。金利が上がるという環境の中、インフレや賃金上昇が定着しつつある。それ以前のデフレ環境下では「企業のお客様は物価も賃金も上がらない中で『ステイ』のまま動かなくてもマイナスにはならなかった」と加藤氏。

 それがインフレ環境下では、自ら動いて新商品、新市場の開拓を進めなければならない。「ステイ」のままではコストだけが上昇してしまう。

「経済を回していかなくてはいけないという推進力が出てくる。預金金利が上がるという背景にある、経済が動き始めることにつながる」

 そのため、銀行としては顧客企業のビジネス拡大や、成長に向けたM&A(企業の合併・買収)の支援の他、逆に業況が悪化する企業に対して事業再生支援をするという形で、役割を果たしていく。

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