2024-08-28

コバーズキッズ会長兼CEO・小林幸典「0~5歳の子を持つ親に『子育ては楽しい』ということを伝える教育の実践を」

小林幸典・コバーズキッズ会長兼CEO

国づくりのために人づくりが必要─。今、株式会社による保育園の運営を手掛けるコバーズキッズ(山梨県甲斐市)。「甲斐ひよこ保育園・ひよこ保育園」を運営する同社会長兼CEOの小林幸典氏は「自己肯定感」を高める教育を展開している。さらには「0~5歳の間に保護者も一緒に教育することが大事」として、子育てに悩む親への教育も行っている。小林氏が経営の視点で考える保育の姿とは─。


保育、教育の一体化が進まない現状

 ─ 少子化の中で、株式会社による保育園の運営を手掛ける小林さんの立場で、今課題と感じていることは何ですか。

 小林 この急激な少子化や人口減に打つ手があるのか?

 その要因の一つには、日本の幼児期の制度・構造が戦後74年目の今年、先生1人に対し子ども30人が、わずか25人に変わるという遅さです。先進国では先生1人に10人以下が普通で日本の過酷さが際立ちます。

 安心出来る保育・幼児教育体制がない中で「不適切保育事件の多発や保育士の集団退職で閉園騒ぎの環境」に安心して子育てが出来るはずがありません。国、自治体、保育業界や政治が劇的に安心出来る制度、構造に思い切って変革しないと、更に出産を躊躇する夫婦やその予備軍も不安を抱いて安心できないと保護者達は口にしています。

 そこに、0~5歳までの幼児期の制度が一体化されていないことは最大の課題だと考えています。幼稚園が文部科学省、保育園が厚生労働省、認定こども園が内閣府の管轄だったところから、保育園と認定こども園だけが子ども家庭庁に移っただけで、未だに一体化されていないのです。

 小学校、中学校、高等学校、大学の6・3・3・4制は階段を上るよう青年期へと人を育てていますが0~5歳の脳が90%まで完成する人生で一番大切な幼児期の保育、幼児教育が園任せで国の指針と実態は乖離しています。

 つまり、保育園は、「保育所保育指針」、認定こども園は「認定こども園教育・保育要領」幼稚園は「幼稚園教育要領」という指導指針にて三者同じ目標の、「3つの柱」「10の姿」を卒園までに身に付けるようにと国は求めています。

 しかし、指針の理解と実践方法は保育園、認定こども園、幼稚園の各現場任せで、目指す姿の到達度合いも具体的に把握する術もバラバラでは、国は子どもをどう育てたいのかが見えない。つまり、言い放しで確認なしの曖昧な取り組みになっているのです。

 ─ お題目を並べてはいるけれども、そのチェック体制がないと。

 小林 そうなんです。一般に保育園は預けるところ、幼稚園は教育するところと言っていた時のニーズとは大きく変わり、全国の夫婦共働き世帯が75.5%と大幅増加している現在は、預け先となっている保育園のニーズは高い。

 一方、保育園側は、いまだに昭和の預かる保育の遊び中心で教育への対応が疎かで「小1プロブレム」と称する小学校に馴染めなく落ち着きのない子どもが増えている現象が出ています。学校に馴染めない子どもを防ぐには子どもの成長を促す「3つの柱」で「10の姿」への取り組みが重要です。国、自治体の真摯な「質」への取り組み状況の確認と指導を絶対条件とすべきです。

 ─ 預かるだけになってしまっているということですね。

 小林 ええ。ですから、各園の理念に基づく保育、幼児教育の仕組みと「3つの柱」「10の姿」への子どもの成長への実践力が求められています。

 そこで当園のパーパスは「きみが大人になったとき自分を信じて前に進むことができるように」と30歳時点の活躍を想定した生きる力の「自己肯定感を高める園児を育む」を最も大切と考え取り組んでいます。

 始めてから6年目になりますが、昨年度には幼児教育雑誌からアワードをいただくなど、様々なご評価をいただけるようになりました。

 保育・幼児教育の「質」の維持・向上に4つの価値提供の取り組みがあります。1つ目が「自己肯定感を高める園児を育む」、2つ目が「就学前教育の実践が小学校での成長の基礎作り」、3つ目が「ICTによる働き方改革」、4つ目が「SDGsに取り組む保育園」で、それに対する保護者満足度は大変満足72%、やや満足17%で取り組みに一定の評価をいただいています。

 また、これらの活動は民放及び公共テレビ番組で取り上げていただいたことも大きかったですね。行政や保育業界からの反応もありましたが、何より保護者の方々から「保育士はこんなに大変なのか」という反応があったことが大きかったですね。

 保護者の方々は日常の活動を見ることができませんから、言うことを聞かない子ども達にどう対応しているのかを見て「すごい」というお声をいただくことが多かったことと、園児がいつも明るく笑顔で楽しんでいる、それは保育士が明るく笑いのある楽しい保育だから楽しんで取り組めるんだと言う声は嬉しい。

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