2024-10-02

米中対立など世界分断の中、新総裁・新総理に求められる国家ビジョン

写真はイメージ

財政健全化と経済安全保障



 国の基本軸をどうつくるか?

 新総裁にとって、国債と借入金、政府短期証券を合計した〝国の借金〟が約1300兆円に膨れ上がっている中、国力に直結する財政運営をどう切り盛りしていくかも重要なテーマの1つ。

「戦略的な財政出動」「経済あっての財政」「独立財政機関の設置」―─。岸田文雄内閣が今年6月に決定した経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)には、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)について「2025年度の黒字化を目指す」との目標が3年ぶりに明記された。

 その際、自民党内では財政規律を維持する財政規律派と、財政支出を活発化させる積極財政派との対立が表面化した。そのため、骨太方針では機動的な歳出も容認した。経済成長と財政健全化をどう両立させていくのか、新総裁の調整手腕が問われそうだ。

 経済安全保障も重要課題となる。最先端技術や重要物資などを安定確保するためのサプライチェーン(供給網)の強化は、米中対立が続く中で待ったなしだ。11月の米大統領選で、トランプ氏かハリス氏のどちらが選ばれるかで対応も変わるだろう。それでも米国の対中政策は大きく変化することはなさそうで、逆に米中貿易戦争が激化する可能性さえ指摘されている。

 中国とどう向き合うか─―。新総裁には自由、民主主義、人権、法の支配といった価値に基づき、日米同盟を基軸にEUやASEAN諸国との関係再構築が求められる。だが、アジア諸国もしたたかだ。「日本を訪ねた翌日に中国の首脳と握手する関係。彼らは中国・米国・日本を天秤にかけた外交を見せる」(安全保障関係者)。

 ロシアのウクライナ侵略は長期戦となっており、中国は東・南シナ海で一方的な現状変更を試みている。しかも北朝鮮は核・ミサイル開発を続けている。強権主義的な国に囲まれる日本にとって、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」(岸田文雄首相)という危機感を忘れてはいけない。

 自民党は憲法を改正し、緊急事態条項の創設と自衛隊の明記を目指している。他国からの侵略や大規模災害など国民の生命・財産が脅かされる非常事態に備える必要があるからだ。その点、新総裁がなぜ自主憲法改正が必要なのかを丁寧に国民に説明しなければならない。

 内憂外患の中で複雑に絡み合って横たわる重要政策課題に対し、日本の明るい未来を切り拓くべく、国家戦略を描く想像力がリーダーには不可欠。そして、それを国民に丁寧に説明する発信力と、実現に移す実行力が問われている。

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