2024-09-22

東大が授業料を2割値上げ 全額免除の年収制限は引き上げ

「これから学内でさらに審議をはかるため、決定時期は未定だが、早ければ9月内に最終決定をする」(関係者)─。

 東京大学が25年度より授業料を現行53万5800円から64万2960円に値上げする方針を発表した。決定すれば2割の授業料値上げとなる。今回の値上げは、大学のグローバル競争下において、教育学修環境を持続的に改善する基盤を構築することが目的。長らく厳しい環境と言われていた大学経営を改善する改革の一つである。

 値上げについて東大は学生や教員との対話を進めてきた。発表した資料によれば、学生・教員との意見交換の中でも、博士課程学生に対する配慮の要望はとりわけ高かったという。

 博士課程の学生は就職に至るまでの研究期間が長期に及ぶこと、また生計を主に支えている者が親ではなく、本人である比率が学士・修士課程生と比較して極めて高く、所得が低い層の比率が高いことがわかった。それを受け、今回の案では博士課程においては価格改定を行わないとしている。

 東大総長の藤井輝夫氏は「受益者負担の原則に則って考えたときに、われわれ国立大学の受益者は個人だけでなく、社会全体が受益者であると思う。公的にも、民間からも、個人からも学生の経済的な面においてどれくらいサポートできるのか、広い視点での議論が必須である」という認識の下で授業料問題に取り組んできた。

 値上げの一方で、経済的に厳しい状況にある学生に関しては支援を拡充する。学士課程(25年4月から)、修士課程(29年4月から)で授業料全額免除の対象を、現行の年収制度から200万円引き上げ、世帯年収600万円以下とする。

「経済的に困難を抱える方の中で優秀で学ぶ意欲に満ちている方はいます。そういう方がしっかりと学ぶ機会が得られるように考えていかなければならない」と藤井氏。世帯収入600万円から900万円以下の学生についても、出身地など個別の状況を勘案して一部免除を行うとし、個別対応もしていく方針だ。

 授業料の値上げ分については学内のDX化推進やティーチング・アシスタントの処遇改善、施設・設備の維持改修等に充てるとしている。

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