「コロナ以前から取り組んできたことが、結果として時代に適った戦略となっている」──中田氏はこう話す。今年4月に新たな中期経営計画をスタート。以前から進めてきた「資産管理型ビジネス」へのモデルチェンジをさらに進め、預かり資産90兆円の実現を目指す。また、営業所を拡大し、既存店舗を効率化していく店舗戦略などの改革も軌道に乗りつつある。中田氏が目指す今後の姿とは──。
金融相場から業績相場へ
─ コロナ禍が継続している中でも世界経済は回復していますが、一方で株価の先行きは不透明な点もあります。中田さんは現状をどう見ていますか。
中田 今回、コロナ禍によって株価は、一旦は大きく下落しました。そこで何が起きたかというと、まずは緊急避難的に世界の中央銀行が、大幅な緩和政策をとって、結果としてそれがセーフティネットとなって、株価は反転、上昇し始めました。
株価というのは先を見て動きます。1つはコロナ後の世界を見据えた先取りの動き、もう1つはなかなか定量化できませんが、金融緩和によって一時的に発生した過剰流動性の一部が、リスクマネーとしてマーケットに入ってきたこと。いわゆる「金融相場」の側面があったかと思います。
─ 今後についてはどう見通していますか。
中田 今後、いよいよ欧米中国の経済が正常化に向かって、日本も遅ればせながら今年中に希望する方にワクチンが行き届けば、年後半ぐらいから経済は正常化の動きが出ると思います。
そうなると今度は、金融緩和から、経済の成長に合わせて金融政策をコントロールしていかなければいけません。それが米国で一部言われているテーパリング(量的緩和の縮小)という議論につながっているのだと思います。
今後、マクロ経済の成長に合わせて、企業業績が回復、成長期に向かっていくことを考えると、金融相場から「業績相場」に移行することになります。当社グループの大和総研では、日本は2022年の7―9月期には、19年の7―9月期の水準、つまりコロナ前に戻るだろうと予測しています。
─ その時に株価はどう動くと?
中田 来年度、場合によっては年後半には再来年度の企業業績もおぼろげながら見えてきますから、その業績に対してPER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)などでバリュエーション(企業価値評価)をして、株価が形成され始めます。
過去にもそういう時期がありましたが、景気が悪くて金融を緩めた時に、金融相場となって株価が上がって、それが終わると今度は実体経済、業績相場に移行する。株式市場は今、次の業績相場に移行しつつあるのではないかと見ています。
世界経済の先行きはどうなっていくか
─ 世界を見ると米中対立、経済安全保障の重要性が言われるなど、地政学リスクもあります。このリスクをどう見ますか。
中田 ここは国策も絡んでなかなか読みづらいですね。この1年半くらいはコロナ禍の方に関心が集まっていましたが、今に始まった話ではありません。
当然、国と国の話ですし、不測の事態がすぐ訪れるということはないと思いますが、偶発的なリスクは避けてもらいたいと思います。
外交政策の話ですから、中長期に及ぶ中で押したり引いたりという時期もあるでしょうから、今後注視していかなければならない大きな問題ではあるものの、すぐに経営のリスクにつながる問題が顕在化するというものではないと思います。
─ 様々な要因も絡みながらも、グローバル世界は成長し続けると見ていると。
中田 そうですね。IMF(国際通貨基金)の世界経済見通しでも、世界全体の成長率は昨年がマイナス3・3%でしたが、今年は直近の数字でも6・0%のプラス成長見通しとなっています。
中国は、最近は少し減速感がありますが、それでも8・4%、米国が6・4%、欧州が4・4%、日本はワクチン接種のスピードもありますが3・3%のプラス成長見通しになっています。
IMFは来年の世界経済見通しについて、現段階ではプラス4・4%と見ています。これから2年間はコロナを乗り越えて、いよいよ本当の意味での「ウィズコロナ」の中で経済が回り始めて、成長に向かっていく2年間となるのではないかと思います。
─ 海外の成長を見ると資産運用という観点で、さらに重視していくことになりますか。
中田 日本の金融資産の中で、外貨建て資産の比率は著しく低いのが現状です。経済成長、市場規模のバランスから見て、もっと日本のお客様の中に外貨建て資産があるべきだと思います。その意味でも、海外に注目していきたいと思います。