2021-11-08

【ファストフードに進出】鳥貴族HD・大倉忠司がコロナ禍で見つけた新事業創出のキーワード

今年8月に開業した鳥貴族のチキンバーガー専門店「トリキバーガー」



コロナ禍が後押しした業態開発

 ところがコロナ禍で600を超える店舗の大半が営業時間短縮や休業を迫られ、「まともに営業ができない状況が続いた」(同)。さらにコロナ前から積極出店を重ねていたことで、近隣店舗間で顧客を奪い合うカニバリゼーション(共食い)に悩まされることにもなっていた。

 大倉氏は不採算店を閉鎖すると共に、京セラ創業者の稲盛和夫氏が実践したアメーバ経営を導入。大倉氏は「店長レベルにも落とし込み、あらゆる部門で採算管理の意識を高め、水道光熱費レベルでも増益につなげた」と話す。店舗数はピーク比で約1割減ったが、損益分岐点売上高はコロナ前の約8割の水準まで下がったという。

 そんな矢先にコロナが発生。大倉氏は「感染症は今後も10年単位で起きるかもしれない。居酒屋業態だけでは経営基盤は貧
弱だ。感染症にも強いファストフード業態も持つべきだと思った」。ただ、ハンバーガー構想はコロナ前から既に頭にあった。

 鳥貴族の海外進出を見据え、米国に出張した際、米国のチキンバーガー専門店の繁盛ぶりを目の当たりにしていたからだ。チキン・分かりやすい価格・国産──。「鳥貴族のブランドを活用すればチャンスがある」(同)。コロナ禍を受け動き出した。

 もちろん、居酒屋とファストフードでは店舗運営は違う。大倉氏にとって恵まれていたのは日本マクドナルド出身者が幹部として在籍していたこと。店舗づくりをはじめ、鶏肉は工場で手切りし、ジューシーかつ歯応えを楽しめるようにするなど、居酒屋業態では培うことができなかった発想を持ち込めた。

 一方、居酒屋業態が不要かと言えば大倉氏は明確に否定する。「本来人は人とつながりたい、人と接したい、交わりたいという欲求を本能的に持っている。お酒をツールにコミュニケーションの場となる居酒屋はアフター・コロナでも求められる」

 大倉氏は創業時から激戦市場に挑むという歩みを続けてきた。鳥貴族を創業した1980年代は総合居酒屋が一世を風靡していた時代だった。その中で「家庭では味わえない料理」として焼き鳥に焦点を当て、価格と質で差別化を図って成長してき
た。今回も共通する点が多い。

 ハンバーガー市場は約7300億円の市場だが、コロナ禍でも好調な業態なだけに、ファミレス大手やベンチャーなどの参入が相次いでいる。その中で鳥貴族との共同調達など同社独自の課題もある。文字通り羽ばたけるかどうかの命運はトリキバーガーが担っている。

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