2021-12-30

【財務省】「賃上げ税制」の実効性を疑問視する声くすぶる

自民、公明両党は12月10日、2022年度税制改正大綱を決定した。企業に賃上げを促す「賃上げ税制」拡大と期限が迫っていた住宅ローン減税の4年延長を柱に「岸田文雄内閣が掲げる成長と分配の第一歩」(宮沢洋一税調会長)とアピールするが、早くも与党内からは「全くの力不足」(閣僚経験者)との声が出ている。

 「賃上げにかかる税制措置を抜本的に強化し、岸田内閣が掲げる新しい資本主義の実現に向けて新たな一歩になった」

 鈴木氏は閣議後会見で、企業が法人税から差し引く控除率の上限に関し、従業員の賃金を増やした分から22年度以降、中小企業は最大40%、大企業は最大30%を差し引けるようにしたのを踏まえ、こう強調した。

 看護や介護の処遇改善も踏まえ「今後の賃上げの動向をフォローアップすることが重要だ」とも述べ、賃上げの加速に期待を示した。ただ、中小企業の6割は赤字決算で法人税を納めておらず対象外。政府は賃上げした中小企業への補助金も検討するが、「スピード感に欠ける」(自民ベテラン)と早くも実効性を疑問視する声がくすぶる。

 一方、株式の配当や売買益にかかる金融所得への課税強化は「検討が必要」と記載しながら今回も見送られ、実施時期も明記されなかった。「金融所得課税は分配政策の“本丸”。首相は来夏の参院選に勝利してから手を付けるつもりだ」(官邸筋)

 臨時国会では、18歳以下の国民への10万円給付をめぐり、現金とクーポンに分けた支給方法やクーポン導入に伴う事務経費について野党が攻勢を強めるだけでなく、連立を組む公明からも「官邸が財務省案を丸のみした」などと批判が出ている。各種世論調査でも岸田内閣の支持率は高いが、10万円給付に対する評価は低く、今後、財務省が政権批判の矢面に立たされる様相が強まっている。

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