2022-02-21

熱狂なき歴史的好決算 商社各社が軒並み最高益

堀健一・三井物産社長

資源価格の高騰によって、総合商社各社が歴史的な好業績となっている――。

「商品市況のアップサイドをしっかり取り込むと共に、事業ポートフォリオを良質化し、収益基盤の強化を実現した」と語るのは、三井物産副社長CFO(最高財務責任者)の内田貴和氏。

 三井物産(堀健一社長)の2021年4―12月期の連結純利益は前年同期比218・3%増の6333億円となり、過去最高益を更新した。要因は、原料炭や原油・ガスの価格上昇やLNG(液化天然ガス)トレーディングが好調だったこと。

 また、「自動車や化学品、鉄鋼製品などの基礎収益力の拡大や市況・為替変動によって全セグメントを上方修正した」(内田氏)ことから、通期(22年3月期)では8400億円の純利益を見込んでいる。

 資源価格の上昇が追い風となり、自動車や食料品などの非資源分野が好調なのは他社も同様。伊藤忠商事と三菱商事は8200億円にそれぞれ上方修正しており、上位3社が初の8千億円台となる見通しだ。

 ただ、伊藤忠商事CFOの鉢村剛氏が「異常な資源バブルと考えている。今年の数字が参考になるとは考えにくい」と語るように、各社とも慎重な姿勢を崩していない。市況の反動を懸念し、早くも焦点は来期(23年3月期)を見据えている。

 三井物産は「コロナ以前から着手している経営基盤の強化や成長戦略を加速していく」(内田氏)として、自動車やヘルスケア事業の強化を図る考え。三菱商事も自動車や鮭鱒養殖事業などを強化、伊藤忠も「非資源を中心に、着実に積み上げていきたい」(鉢村氏)と情報・金融事業を強化する考えだ。

 脱炭素やDX(デジタルトランスフォーメーション)といった社会変革に加え、足元では新型コロナウイルス感染症の変異株「オミクロン」やウクライナ情勢を始めとする地政学リスクなど、先行きには不透明感が漂う。熱狂なき歴史的好決算となった総合商社。今後も引き続き、資源価格に左右されない体制づくりが求められている。

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