2022-02-14

【学生数は減少でもウナギ登り】なぜ、ジェイ・エス・ビーの「学生マンション」は好調なのか?

近藤雅彦・ジェイ・エス・ビー社長

学生数は少子高齢化で減少傾向でも学生マンションはウナギ登り――。学生マンションの供給戸数で最大手のジェイ・エス・ビー(東証一部上場)がコロナ禍でも管理戸数を増やしている。「学生に特化していることが強み」と語るのは社長の近藤雅彦氏。ニッチ市場での同社の「学生マンション」ビジネスとは。

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管理戸数は業界トップの7・6万室

「学生マンションにかかわる企画開発から設計、仲介・斡旋、そして建物管理に至るまで、自前で学生のニーズを満たしていることが強みだ」――。このように強調するのは「ユニライフ」のブランド名で学生マンションを全国規模で展開するジェイ・エス・ビー社長の近藤雅彦氏だ。そう語る同氏も学生時代に同社が運営する学生マンションに住んでいた。

 学生の一人暮らしの住まいと言えば、マンションやアパートが一般的。しかし、同社は学生マンションという新たな選択肢を作った先駆けだ。オートロック設備や防犯カメラ、カメラ付きインターホンなどのセキュリティ設備に加え、管理栄養士による食事が提供される食堂や机やベッド、洗濯機といった家具・家電が設置されている部屋などもある。

 国内では人口減・少子化が叫ばれているが、進学率は毎年過去最高を記録。それに伴い、学生数は約300万人で横ばいが続くが、同社の管理戸数は年平均6・9%で拡大しており、2021年4月には7・6万室で業界トップ、22年春には8万室を見込む。ただ、「学生のうち180万人は下宿する自宅外生。シェアは5%未満なので、さらなる成長が私の使命」と昨年1月に社長に就任した近藤氏は自らの役割をこう強調する。

 賃貸マンションと学生マンションは性格が異なる。学生は入学試験・合否判定を経て4月1日の入学式に合わせて入居するサイクルで動き、おおむね4年間で退去し、次の入居者と入れ替わる。また、駅から距離のある場所での立地やコミュニティスペースなど賃貸マンションにはあまり見られない仕様だ。

 一方で、土地保有者(オーナー)から見れば、駅から遠い物件だと収益性が悪くなりがちでも、大学までの距離が徒歩圏内であれば確実な入居者が見込める。「遊休不動産の土地活用にもつながる」(同)ことになり、利回りが低いと考えられがちな郊外の土地でも実質5~6%の利益を還元しているという。

 入居率99・9%――。同社が高い入居率を維持できる背景には独自の強みがある。近藤氏によれば、それは「オーナーに対して建てるところから管理まで全て自前で展開している」点だ。前出した食堂も24時間対応可能なコールセンターなども自前で運営。「鍵をなくしたり、トイレが詰まったり、隣の住民への苦情など、あらゆる要望に対応できる体制を整えている」(同)。

 しかも、他社とは違い、全国規模で展開していることが独自のサービス創出につながっている。例えば、「スライドシステム」では東京のA大学に合格した後、京都のB大学に合格して進学を決めるなど、契約開始前に進学先が変更になっても無料で他の学生マンションに変更可能だ。また、「併願登録」では第二志望校対象の部屋の契約と合わせて、第一志望校対象の部屋も無料で確保することができる。

 同社の学生マンションが多数建てられたことで、有数の学生街へと育った場所もある。大阪の中心地である「なんば」に近い上本町6丁目だ。周辺には神戸医療福祉大学や大阪女学院大学、大阪教育大学などがキャンパスを構え、同社の学生マンションも10棟ほど展開。学生数が増え、百貨店や飲食店などが数多く軒を連ねる街になった。

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