2022-05-17

危機で露呈した日本の「根本的な弱さ」にどう手を打つか?ニッセイ基礎研チーフエコノミストの直言

矢嶋康次・ニッセイ基礎研究所チーフエコノミスト



 ─ 国の根幹であるエネルギー自給率はどう高めるべきだと考えますか。

 矢嶋 すぐに上げるのは難しいですが手を付けなければなりません。エネルギーはどこでイノベーションが起きるかわかりませんから、様々な方向に日本の科学技術のアンテナを張り、資金を投じる必要があります。

 ただ、足元ではエネルギーを有効的に使うしか手段はありません。大きく分けて2つですが、1つはエネルギー効率を高める、もう1つは原子力発電所を再稼働することです。そして需要側はEV(電気自動車)などを活用した蓄電に力を入れる必要があります。選択肢はそれしかないというところまで追い詰められていることを認識すべきです。

 ─ 外交も重要になりますが、政府の打つべき手は?

 矢嶋 安全保障面では、日本は「西側」だという位置づけをきちんとすることが必要です。アジアの中ではインドとの関係、韓国の新政権、北朝鮮への対応など、日本の立ち位置を明確にすべき課題が山積しています。

 エネルギー面を考えると中東との関係は重要です。ロシアにエネルギー源を頼っていたのは日本だけでなく欧州も同様です。足元で中東と米国の関係はぎくしゃくしていますが、日本は中東との関係をうまく築き、「西側」に石油を流してもらうことに貢献することが重要だと思います。

 ─ 日本は国も企業も時代が変わったと認識して手を打つ必要がありますね。

 矢嶋 例えばコロナはデジタル化を促し、働き方を変えるなど「不可逆」な動きをもたらしました。ロシア・ウクライナの問題も不可逆と捉えなければいけません。不可逆には不可逆で立ち向かわなければいけない。

 日本の根本的脆弱性、企業の稼ぎ方について、どう対応すべきかを考える必要があります。

 そして日本の衰退を止めなくてはいけません。様々な問題がある中で、特に人的パフォーマンスが弱い。もっと子供や孫に何が残せるかを考えて手を打たないと、老いてダメな国になってしまう。

 そのためには、私は若者に対する「教育」と「場」の提供が重要だと考えています。

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