労働者不足が最大の課題 上田氏は海外展開も視野に入れる。具体的にはベトナムだ。「中間所得層の増加に伴って住宅購入意欲が高まっている」(同)からだ。また、長期の都市開発計画も進む。
同社は17年から同国でテストマーケティングを実施し、現地パートナーに約500トンの足場を提供した。22年10月に現地法人を設立し、25 年までにレンタル拠点を3カ所展開する方針。同国で足場レンタルのトップシェア企業を目指す。
このように成長が見込める足場業界だが、大きな課題も抱えている。それが労働者不足だ。「年収は低くないが、『3K(きつい・汚い・危険)』の職業で、何よりも足場職人を知らない。無関心が壁だ」と上田氏。
「このまま足場を組み立てる職人がいなくなれば日本中の建設工事が稼働できなくなってしまう」(同)と危惧する。そこで上田氏が注力するのが、足場が持つ「カセツ(仮設・仮説)性」の追求だ。
そもそも足場は〝仮設〟のもの。「改修中に組み立てられ、工事が終われば撤去される」(同)。それだけ安価かつ簡単に利用できる。さらに何度も利用できるため、環境にも優しい。また、企業や地方自治体の実証実験などで構築物を組み立てて成果を試す〝仮説〟にも適している。
上田桂司・ASNOVA社長 実際、大手電機会社のイベントで空間の形を変える試みに足場が使われたり、自治体が保有する建築物の跡地の有効活用を検討する際に、足場を使ってどんな建物が市民にとって有益かを試すなど、足場の役割は建設現場にとどまらない。
限られた期間でしか人の目に触れない足場。社名の通り足場の〝明日の場〟を広げていけるかどうかが上田氏の使命となる。