大手がやらない保険を開発 治療用アプリも普及へ
加えて、マイシンの強みとなっているのが「保険」事業。傘下のMICIN少額短期保険が昨年8月に乳がんなど女性特有のがんの再発時に保障する保険を発売。がんの治療中でも再発に備えて加入できる点が特長だ。
原氏は「これまでの保険は健康な人が病気になったとき、あるいは亡くなったときに保障するものだったが、当社の保険は病気の患者をターゲットにしている」と語る。それができるのは同社が蓄積してきた〝医療知見〟があったからだ。
一般的に保険会社が保険商品を設計する際、標準生命表、患者調査票といったデータを活用するが、これらのデータは荒く、医療技術の進歩によるがんの生存率の上昇などを十分に反映できていなかった。
しかし、マイシンが参照するデータは病院の保有データや臨床に近いデータなど、専門的かつ詳細なデータを扱っている。そのため、通常であればリスクが高いと見られる患者でも同社が独自にリスクを分析し保険を開発。大手保険会社では手掛けにくい領域に対応している。
さらに今後は「治療用アプリ」の普及を進める考え。同社はテルモと組み、糖尿病の患者の生活習慣や服薬情報をアプリに記録し、医師と共有できるアプリの開発に取り組んでいる。デジタル技術の活用で治療を効果的に進めることを狙う。
「薬、そして医療機器での診断・治療に続く〝第3の診断・治療のソリューション〟にしたい」と原氏は強調する。このソリューションを活用することで、途中で治療をやめてしまって重症化する患者を減らせると見る。
そんな原氏は東京大学医学部卒業後、研修医として医療現場を経験。目の前で「こんなはずじゃなかった」と患者が自らの人生を悔やむ姿を見て「常に何らかの選択肢がある環境をつくりたい」と考えた。
医師を辞めた後、第1次安倍内閣時に内閣特別顧問だった黒川清氏の政策秘書を務め、「医療政策や制度がどのようにつくられていくかを学んだ」。マッキンゼー、日本医療政策機構を経て15年に起業したという足取り。
「もっと医療データを活用すれば健康づくりや治療の選択肢を増やすことができる」と原氏。デジタル化が求められる医療業界でマイシンがどこまで風穴を開けられるかが勝負となる。