エイチ・アイ・エス（HIS）が保有していた長崎県佐世保市にあるテーマパークのハウステンボス（HTB）が香港の投資会社・PAG系の投資目的会社に売却される。

ハウステンボスの売却を検討へ 【HIS】の財務健全化が課題に

　2010年に経営難に見舞われていたHTBの再建にHISが乗り出し、一時はHISの営業利益の半分を稼ぎ出すほどまでに成長していた。

　しかしコロナ禍でHISの財務体質改善が急務に。国内外100店舗の閉店、従業員の社外出向などの手を打ってきたが、4月末の自己資本比率が5.8％と苦境に立たされていた。資本金も1億円に減資する。

　HISは20億円で取得したHTB株（66.7％）を666億円で売却。地元の企業も売却する。HISは「テーマパーク事業に関する知見を有し、機動的かつ柔軟に資金供給を行うことができる当社グループ外のパートナーがHTBと連携をより強力にしたうえで事業を追求していくことが、HTBの更なる発展につながる」と話す。

　PAGは7兆円以上の運用資産を持ち、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンへの投資実績がある。プライベート・エクイティ日本共同代表の伊藤宏一氏は「HTBの今後の成長ポテンシャルは極めて大きいものだと見込んでいる」と語り、「アジア全域で培った消費者向け事業の知見も最大限に活用」する考えを示す。

　PAGの投資を受けた企業の首脳は「潤沢な資金を振り向けてくれる」と話す。PAGはマーケティング企業「刀」にブランディングや運営などに関する支援を要請。USJを再建した代表の森岡毅氏の協力を仰ぐ。

　テーマパークという大きな事業の柱を失ったHIS。隣接地にカジノを含む統合型リゾート（IR）の誘致を目指す長崎県。次なる飛躍の軌道を描けるか。