2022-09-20

辻哲夫・元厚生労働事務次官が語る「85歳以上も社会参加できる世の中を!」



協業するキユーピーへの期待

 ―― 東京大学高齢社会総合研究機構はキユーピーとも協業しています。辻さんがキユーピーに対して期待することとはどんなことになりますか。

 辻 産業界全般でモノからコトへという言葉をよく聞きます。食品単体の販売も大切です。その食品が皆に愛されることも大事でしょう。ただ、単に食品を売るだけではなくて、食品を売ることを通して、食の生活様式を提案していくことが大事になってきます。

 つまり、これを食べたら健康は大丈夫だ、あるいは食べ物によっては、お薬に近い効能を持っているものもあるかもしれませんが、フレイル予防の場合は三本柱の中で大切なことは「しっかり食べる」ということがポイントです。

 誰もが歳をとったら筋肉が減少して痩せるのです。だからこそ、しっかり食べるということがもの凄く重要になってきます。三本柱の大きな入り口は「食」です。しかも、これさえ食べてもらったら大丈夫ですよということはありません。

 三本の柱を十分理解された上で、一定量のたんぱく質の摂取が良いといった様々なエビデンスに基づいて上手に「食」を楽しみながら幸せになる。このような生活様式を提案することの重要性をキユーピーさんはきちんと理解され、取り組みの肝に位置づけている。具体的に言えば、キユーピーさんの食品を使った良い食事のレシピも提案されていることです。商品を販売するときに、このような提案をされており、その願いがお客様に伝わることが大切です。

 その点、小売店と食品製造業が組んでくださると、その効果は大きいと思います。フレイル予防に一緒に取り組んでくださっている、例えばイオンさんも健康と地域貢献を目標としています。そこにキユーピーさんも非常に大きな夢を持たれた企業としてジョイントされた形となります。

 三本柱の中の「栄養」という柱のうち「食」で言えば、たんぱく質の摂取とは筋肉を作る上でも非常に重要な要素となります。

 先ほど歳をとったら痩せてしまうと申し上げました。実は歳をとって痩せすぎている人よりも、小太りの人の方が長生きしているというデータもあります。ですから、一定のエネルギーを摂らなければならないということです。それから、摂取する食品も一定の多様性がある方が良い。

 キユーピーの髙宮満社長からは東大のエビデンスがきちんとしている点を評価していただいています。東大としてはこういったエビデンスを業界の皆様にお示し、フレイル予防に資するような食生活を提案していくことが大事であるということです。結局、特定食品の業界だけでは限界があるということです。

 フレイル予防は産学連携によって国民の食生活をこのような良い方向へ持って行こうという運動、つまり業界自主認証事業を目指すことになります。今キユーピーさんをはじめ様々な食品メーカーなどが今申し上げたエビデンスの下で連携して研究しているのですが、髙宮社長が語られたように民間企業の強みは食品と食事を美味しく、楽しくしてくださることです。国民に対してそういう商品や大きな場を提供して欲しいと願っています。

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