「1社単独ではできない」
サントリーHDは既にペットボトルでも回収した使用済みペットボトルを新たなペットボトルに生まれ変わらせる「ボトルtoボトル」を展開。国内で回収した使用済みペットボトルを活用しているため、国内で一部の資源を賄っていることになる。
さらに、20年には使用済みプラスチックの再資源化事業への取り組みを開始。米国のバイオ化学ベンチャー企業・アネロテックと使用済みプラスチックの再資源化技術開発を進めている。これも世界初の技術で、熱分解と触媒の反応の技術を応用して非食用の植物由来原料から石油精製品と同一性能を持つ素材を開発するのが狙いだ。
ウッドチップからペットボトル原料などを取り出す技術の開発を進めていた際、プラスチックも生成できるのではないかと考えたことがきっかけで、この技術が汎用化されれば、使用済みプラスチックはゴミではなく資源になる。
ただ、「1社単独ではできない」(同)ことから共同出資パートナー企業との業界を超えた連携を進めていった。共同出資会社として「アールプラスジャパン」を設立。発足当初は12社だったが、今では40社となった。中にはライバルのアサヒグループHDも名を連ねる。
もちろん、これらの取り組みは道半ばだ。CO2削減缶もプレモル全体の年間販売数量の0.3%ほどで、藤原氏は「通常の缶に比べコストが上がることは間違いない」と話す。また、使用済みプラスチックの再資源化も実用化見込みが30年とまだ先だ。
やってみなはれ─。サントリーの創業精神が脱炭素でも展開されている。同社は30年までに自社排出の温室効果ガスを50%削減(19年基準比)、バリューチェーン全体で30%削減(同)を目指し、プラスチックは100%リサイクル素材か植物由来素材に切り替えて化石由来
原料の使用をゼロにする。
「水と生きる」は、同社がお客様や地域社会、自然環境と交わす約束の言葉だ。自然や資源がなければ人々の生活は成り立たないし、自社の事業も成り立たない。その自然や資源を守らなければならないという危機感がサントリーを環境対応に突き動かす。
飲料業界で商品はライバルと熾烈な競争をするが、物流や脱炭素では協調する事例が増えている。その中で世界初の技術で仲間づくりを進められるか。サントリーの「やってみなはれ」が試される。