2021-02-03

近視の進行を抑制する「クボタメガネ」を開発 窪田製薬ホールディングス・窪田良CEO

窪田良・窪田製薬ホールディングスCEO

世界で近視が増加する中


 コロナ禍に関しては、当社は元々、メンバーが世界中に散らばって動いていますし、研究開発企業ですから、事業上の影響はほぼありません。ただ、世界中のビジネス、人の生き方に大きなインパクトを与えており、改めて多くの方が医療、公衆衛生というものを意識する機会と
なったのだと思います。

 2020年1218日、当社は子会社のクボタビジョン・インク(本社・米ワシントン州)が開発しているウェアラブル近視デバイス「クボタメガネ」のプロトタイプが完成したことを発表しました。

 特に近年、アジア諸国で近視が増加していますが、このクボタメガネは近視の進行抑制を目的としたメガネ型デバイスです。近視抑制では角膜の形を変える手法が多いわけですが、クボタメガネは眼球の長さ(眼軸長)を短縮させるアプローチを採っており、これまでにない製品となっています。対象となるのは子供で、将来的には大人も使えるものにしたいと考えています。

 臨床試験を行いやすい環境が整っているということで、現在は米国の拠点で開発を進めています。また20年11月にはアイルランドで最も歴史の長い工科大学であるダブリン工科大学と、共同研究契約を締結しました。

 今後は、さらにクボタメガネが眼軸長に与える影響を検証し、臨床試験を行っていくとともに、デザインも改良を重ねて、21年内の商品化を目指して取り組んでいきます。

 このデバイスの開発に着手したのは2年ほど前のことです。元々我々は、網膜の病気を飲み薬で治すことを目指して取り組んできていますが、その薬は網膜に疑似的に光を当てるようなメカニズムになっていました。そこで、光を眼に当てることで同じような効果が得られないだろうか? と考えて、クボタメガネの開発に至りました。

「クボタメガネ」を語る窪田さん
ウェアラブル近視抑制デバイス「クボタメガネ」のプロトタイプが完成

クボタメガネをかける窪田さん
「今はかなりインパクトのあるデザインなので、今後洗練させていく必要がありますね」と笑顔

FDA、NASAからも高い評価を得て


 現在、創薬の分野では、我々が開発した「エミクススタト塩酸塩」が若年性の黄斑変性「スターガルト病」を対象にした臨床試験の「フェーズ3」に入っています。

 スターガルト病は小児の中途失明原因の第1位の疾患で、現在は治療法がありませんから、治療薬が求められています。上市できれば「ブロックバスター」(1000億円以上の売り上げとなる新薬)になることも期待できます。

 今回、FDA(米食品医薬品局)からオーファンドラッグ(稀少疾病用医薬品)に指定されています。さらにFDA長官がそのことをツイートまでしてくれているのです。世界で最も医薬品に対する高い目利き力を持つFDAから革新的技術だと認められて、サポートしてもらえているということを、ぜひ皆さんにも知っていただけるとありがたいと思います。

 他にも、長期的な製品としてNASA(米航空宇宙局)と共同で、宇宙飛行士向け超小型眼科診断装置の開発も手掛けています。足元では米国政府がコロナ対策に優先的に資金を投じていることもあり難しい状況ですが、「2030年に火星に行く」という目標を掲げています。

 当社はこれからも、眼に関する最適なソリューションを生み出せる、イノベーティブな会社であり続けたいと考えています。



Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事