2023-02-03

再考 日本の安全保障戦略(2回目・中国問題) 元防衛大臣・森本敏


台湾統一は党の歴史的任務



 ─ もう一つ重要なのが、今後の台湾関係です。2024年の総統選挙を控える台湾では、11月の統一地方選は与党民進党が敗北、蔡英文総統は党主席を辞任しました。今後の中台関係がどうなるかですが、中国は台湾をどうしようとしているのか。台湾統一は必ず起こると考えていいのですか。

 森本 先の大戦が終戦を迎え、日本が中国大陸から撤退した後、中国大陸では、毛沢東の共産党軍と蒋介石の国民政府軍が国内戦争に入りました。

 結果として、1949年に共産党主導の中華人民共和国が誕生し、国民党軍は兵員約60万人、追従する人民150万人が台湾に転身して、国民党政府を樹立しました。

 中国共産党としては相手の国民党が台湾に転身し、決戦ができなかったのですが、翌1950年に朝鮮戦争が勃発した際、中国共産党は台湾海峡を渡って台湾の国民党軍を攻撃しようとしますが、米国が空母ミッドウェイを台湾海峡に派遣して、これを牽制・阻止したことがあります。

 中国共産党としては国民党との決着をつけること、すなわち、台湾統一を図ることが共産党の「歴史的使命」であるという認識です。

 ─ 歴史的使命という言葉は重いですね。

 森本 はい。鄧小平氏も1980年代の三大任務として①覇権主義反対②台湾統一③経済建設を掲げていました。習近平国家主席は2021年10月の辛亥革命110周年記念大会で、「祖国統一という歴史的使命は必ず実現しなければならない。実現できる」と言いました。

 2022年10月の中国共産党第20回大会では「台湾統一を解決し、祖国の完全統一を果たすのは党の歴史的任務である。最大の努力を尽くし、平和統一の未来を堅持するが、武力行使の放棄は約束しない。あらゆる必要な措置をとる選択肢を留保する。祖国の完全統一は必ず実現しなければならないし、実現できる」と言い切り、党員の大喝采を受けました。

 ここまで言って台湾統一ができなかったら、習近平国家主席はいかなる責任を負うのでしょうか。ただ、習近平氏が台湾統一を果たせなかったら、共産党支配は消滅するという人がいますが、それは間違いです。

 台湾統一は党の歴史的任務である限り、習近平氏が一度失敗しても、必ず誰かが実現するまで何度でも挑戦します。ということは、台湾統一は必ず起こるということであり、中国が存在する限り、なくなることはないということです。

 日本が是非とも心がけるべきことは、台湾統一は必ず起こるということであり、そのような状況になった後の情勢を念頭に置いて対応策を考え、実行していく必要があるということに尽きると思います。

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