2023-02-07

日本製鉄・橋本英二が進める「覚悟の値上げ」戦略 「シェアが落ちても適正価格の実現を」

橋本英二・日本製鉄社長



 ただ、鉄鋼業界には今後も課題は山積している。何といっても、2050年の「脱炭素」実現に向けた技術開発には、膨大なコストを必要とする。

 実現が求められているのは原料である鉄鉱石の主要成分・酸化鉄から酸素を取り除く、つまり「還元する」際の還元剤にコークスでなく水素を利用する「水素還元製鉄」や、還元鉄を活用した「大型電気炉」による高級鋼生産の技術。

 こうした技術開発に先駆けて、23年度から、実質的にCO2排出がゼロという「カーボンニュートラル鋼」の出荷を開始する。兵庫県の瀬戸内製鉄所広畑地区に新設した電炉で、CO2排出量を実質ゼロと認定された鋼材換算で、23年度の供給量は年率30万トン程度を予定。電炉で使う電力を、CO2を排出しない「グリーン電力」にすることで、製造工程でのCO2を実質ゼロにするというもの。

 ただ、こうした鋼材は製造工程でのエネルギーは違えど、従来の鋼材と性能はほぼ変わらない。「カーボンニュートラル」であることに顧客が価値を感じて高い値段を払ってもらえるかどうか。

 日本の素材メーカー、自動車などのメーカー、販売店など流通、そして消費者、全ての領域で意識改革が伴うことが浮き彫りになった鋼材値上げである。

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