2023-02-17

【地銀変革】しずおかFG社長・柴田久の「課題解決型企業」への転換、人材ビジネス、DX支援など非銀行業務開拓へ

柴田久・しずおかフィナンシャルグループ社長




静岡銀行新頭取が考える銀行の新たな役割

「現状の延長線上に正解がない中で経営のカジを取るということで、難しい時代だと実感している」と話すのは静岡銀行頭取の八木稔氏。八木氏は22年10月の持ち株会社発足と同時に、柴田氏の後を受けて頭取に就任した。

 各地銀共通の悩みだが、長引く低金利環境で、従来の預貸金ビジネスでは収益が上げにくくなる中「お客さまの課題を解決した結果として、我々に収益が入ってくるというスタンスで仕事をしなければ、地方銀行の存在意義はなくなってしまう」(八木氏)と危機感を持つ。

 その意味で、持ち株会社の中における静岡銀行の役割はどうなっていくと考えているのか。

「静岡銀行は、地域における顧客基盤を多く持ち、長い歴史の中で地域やお客さまとの信頼関係や信用力を培ってきた。だからこそ我々が各社の機能をお客さまにつなぐ〝ハブ〟としての役割を果たす必要があると考えている」(八木氏)

 さらに、変化の激しい時代の中では「スピード」が重要視される。そしてスピード感を持って意思決定し、行動していく上でも「ガバナンス」がしっかりしている必要がある。その点で銀行と持ち株会社との関係性は重要になる。

 ただ、意識改革は必要。前述のように地銀の中ではグループ経営で先行してきたが、従来の銀行の下に複数の子会社がある体制の中で、八木氏は「気持ちではグループ連携だと思っても、どうしても頭の中は銀行中心になってしまっていた」と限界も感じていたと振り返る。

 人材の配置でも、銀行での人員を確保してから、グループ会社の配置を考えるという意識だった。今後は、全体最適での経営資源の配分は持ち株会社の仕事となり「グループ各社は、自立(自律)しながら自らの経営を拡大していくことが求められる」。

 他の地銀との連携施策は静岡銀行自身の役割になる。現在同行は山梨中央銀行、名古屋銀行と包括業務提携を結んでいるが、現時点までに協調融資やストラクチャードファイナンス(仕組み金融)における連携で成果が出ている。

 それに加えて今後は「山梨中央銀行とは地方創生、名古屋銀行とは自動車産業を中心としたサプライチェーンの構造変革にさらに取り組んでいく必要がある」と八木氏。それ以外との地銀との連携も、必要に応じて検討していく考え。

 八木氏は就任以来、行内に繰り返し「地域あっての地域金融機関。最大の基盤は地域の信頼」と訴えている。静岡県出身で、地元で働く八木氏だが「お客さまにお役に立っていることが実感できるいい仕事だと感じる。今は変化の時だが、変わることの喜び、感動を役職員に味わってもらうことも私の仕事」

 今、八木氏は率先して顧客を回っているが、まさに地域金融機関の原点を見つめ直す取り組みが続く。


若い世代に期待していること

 その意味で、グループ全体に「変化」の意識を定着させるのは、しずおかFG社長である柴田氏の大きな仕事となる。

 これまでも、役職員が自身の目指す姿・状態を掲げ、その実現のために定量的な目標を決める新たな評価制度「OKR」(Objectives and Key Results)を導入したり、200人規模のグループ人財交流などを実施し、意識変革を図ってきた。

「意識は、若い人達ほど変えやすいと思う。むしろ、我々を含めて、長く銀行で生活してきた人間の方が大きく意識を変えなければいけないのではないか」

 例えば今、デジタル化を受けて、全従業員に業務用スマートフォンを配布して使用しているが、こうしたデバイスなどデジタルに関しては若手の方が対応は早い。「フィナンシャルグループになって、新たなスローガンを掲げて進んでいるが、若い人達が変化への対応をリードしてくれることを期待している」

 すでに、銀行と並列になった子会社では、経営陣、社員ともにこれまで以上の積極性や、新しいことに取り組む姿勢が出てきていることが実感できるという。

 自社のDXもさらに進めていく必要がある。21年1月にはオープン系技術を採用した「次世代勘定系システム」を稼働させたが、今後は本部、支店、グループ会社などが持つ情報を一元管理して活用できる体制づくりも進めていく考え。

 今は、ITプラットフォーマーも金融に参入してくるような変化の激しい時代。柴田氏には「伝統的なビジネスモデルだけでは収益に結びつきづらくなり、規模も小さくなる可能性がある」という危機感がある。

「我々は静岡で生まれ、育てていただいた企業。この地域はどんな環境にあっても守っていかなくてはいけないし、共に歩んでいく。これは将来においても変わらない」

 その意味で求められるのは、金融を軸にしながらも、グループ会社も含めて地域の顧客の課題を解決する「ソリューション」を提供する存在であること。

 難しい状況に置かれている地銀の中で新たなモデルを示すことができるかが問われる。

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