2023-03-04

大和総研・熊谷亮丸副理事長が提言 「資産所得倍増プランが日本経済再生の起爆剤に」

岸田政権の目玉政策の一つである「資産所得倍増プラン」は、「貯蓄から投資へ」という流れを加速することなどを通じて、日本経済再生の起爆剤となることが期待される。

【あわせて読みたい】大和証券グループ本社・日比野隆司会長の提言「『資産所得倍増プラン』を国力の再興につなげるべき」

 筆者は、新しい資本主義実現会議の下に設置された資産所得倍増分科会のメンバーとして、2022年11月末に取りまとめられた資産所得倍増プランの策定に深く関与した。

 資産所得倍増プランは、家計の預金が投資にも向かい、持続的な企業価値向上の恩恵が家計にも及ぶという意味で、「成長と分配の好循環」が実現することを目指している。今後5年間でNISA口座数を3400万口座に、投資額を56兆円にそれぞれ倍増させる目標を明記し、長期的な目標として、資産運用収入そのものの倍増も見据えて政策対応を図ることとされている。

 その上で、同プランは、①家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるNISAの抜本的拡充や恒久化、②加入可能年齢の引上げなどiDeCo制度の改革、③消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設、④雇用者に対する資産形成の強化、⑤安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実、⑥世界に開かれた国際金融センターの実現、⑦顧客本位の業務運営の確保、という7本柱の取組みを一体として推進することを掲げている。

 NISAに関しては中間層を中心として資産形成をさらに促すために、制度の恒久化に加えて、非課税保有期間の無期限化、非課税限度額の引上げなどの抜本的拡充を図ることとされた。年間投資枠は大幅に拡充され、つみたて投資枠は120万円、成長投資枠は240万円となった。この結果、NISA制度はシンプルで使い勝手のよいものとなり、働き方や生き方が多様化する中、NISAを活用して、様々な年代の多くの方々に、ライフプランや資産形成ニーズに応じた投資をしていただける基盤が整うことになる。

 また、金融経済教育の充実・強化策として、新たに令和6年中に、官民一体となった金融経済教育を戦略的に実施するための中立的な組織として、金融経済教育推進機構(仮称)を設立することになった。

 現状、わが国の家計金融資産・約2000兆円は、半分以上がリターンの少ない現預金で保有されており、年金・保険等を通じた間接保有を含めても、上場株式・投資信託・債券の割合は僅か12.4%にすぎない。また、家計金融資産における税制優遇された資産の国際比較を行うと、米国・英国は税制優遇された資産が20%を超えているが、日本は現時点で1.9%しかない。

 筆者は、今回実現したNISAの恒久化・抜本的拡充及び金融経済教育の充実をはじめとする、資産所得倍増プランが実効的に推し進められることによって、「成長と分配の好循環」が実現し、日本経済が再生に向かうことを心の底から期待している。

Pick up注目の記事

Related関連記事

Ranking人気記事