平準的な人材から「尖った」人材づくりへ
─ 「失われた30年」と言われますが、30年単位で取り戻さなければなりません。今取り組まなければ間に合わない。何に取り組むべきだと考えますか。
福川 企業の「空気を変える」ことだと思っています。今、政府も岸田首相も、そういう方向で企業に働きかけつつありますが、イノベーションに挑戦する、人材力を高めることにもっと注力する必要があります。企業経営も意識を抜本的に変えることが大事ではないかと思います。
─ 「ジョブ型」などが言われていますが、雇用のあり方についてはどう考えますか。
福川 雇用の「信賞必罰」といいますが、評価をきちんとして、新しいイノベーションに努力する人にもっと報いていく必要があります。これによって企業経営、人材教育の仕方を根本的に変えていく。「企業は人なり」ですから、人をどうやって育てるか、どうやって使っていくか、人材力を高め、有効に活用する環境を整えるしかありません。
日本が高度成長の時には、平準的な人材を育てることが中心でした。しかし、今はイノベーションに挑戦する技術者や企業を革新していく経営人材、いわば尖った人材を育てていくことが求められる時代です。
─ 研究開発など、将来に向けての投資の考え方は?
福川 企業の利益配分の仕方も研究開発をもっと伸ばし、それに貢献する優秀な人材には報いていく必要があります。
それを支える教育は当然重要です。日本は小学校、中学校のレベルは国際的にも高いと言われますが、大学の競争力は圧倒的に低い。例えば英タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)が発表している大学ランキングによれば、日本は200以内に東京大学と京都大学しかありません。米国は58校がランクされています。
先ずは教育段階から変えていく必要がありますが、同時に日本社会全体の意識を変えなければいけないと思っています。